研究課題/領域番号 |
20K04252
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横山 春喜 鈴鹿工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (20583701)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロアクチュエータ / 二酸化バナジウム / マグネトロンスパッタ / 相転移 / 熱処理 |
研究実績の概要 |
VO2を用いた電圧駆動型のマイクロアクチュエータ実現に向け、マグネトロンスパッタ法を用いて酸化バナジウム薄膜の作製を行い、その膜質に及ぼす熱処理の影響について調べた。 ターゲットには金属バナジウム、基板にはスライドガラスを用い、スパッタリングはアルゴン希釈の10 %酸素ガスと100 %のArガスを混合させて行った。試料の熱処理はアルゴン雰囲気の減圧下(1.5 Torr)、熱処理温度を200 ℃~500 ℃で変化させて行った。 熱処理によりどのような結晶構造の変化が起きているか明らかにするためXRD測定を行った。この結果、熱処理前の薄膜はアモルファス状で、400℃以上で熱処理によって、VO2とV2O5の結晶が混在する薄膜に変化することが分かった。電気的特性評価はvan der Pauw法を用いて行った。抵抗率の温度変化を調べた結果、熱処理温度400℃以下の試料では温度上昇にともない、抵抗率比は徐々に減少した。一方、熱処理温度400℃以上の試料では、65℃~75℃にかけて急激に抵抗率比の変化が観測された。この急激な抵抗率比の変化が相転移を示していると考えられる。さらに、光学的特性評価を透過率測定とラマン分光を用いて行った。透過率測定結果からバンドギャップを見積もった結果、VO2のπバンドのバンドギャップに対応すると考えられる値が熱処理温度400℃以上の試料で得られた。ラマン分光測定では、熱処理温度400℃以下では特徴的なピークは観測されなかった。一方、熱処理温度400℃以上の試料からは既に報告されている室温でのVO2薄膜のラマンスペクトルとほぼ一致するスペクトルが得られた。 以上の結果から、マグネトロンスパッタ法を用いて作製した酸化バナジウム薄膜を400℃以上で熱処理を行った場合、VO2とV2O5が混在する薄膜が形成されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響と計画していたターボ分子ポンプの保守でトラブルが発生し、スパッタ装置を稼働できない期間が数か月発生した。このためVO2薄膜作製条件の最適化計画に遅れが生じ、今年度予定していた表面平坦化、積層構造の作製が未着手の状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
VO2ターゲットを用いた薄膜条件の作製を開始し、作製条件の最適化を加速する。当初計画では表面平坦化、積層構造の作製条件最適化の順番で検討を行うことを考えていたが、これらの検討を平行して行い、計画の遅れを取り戻す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れにともない次年度使用額が発生した。今後は、研究を加速し遅れを取り戻す予定である。
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