研究課題/領域番号 |
20K04254
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
中村 健太 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部機械技術グループ, 主任研究員 (20556849)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポリマー / トライボフィルム / 吸着 / 境界摩擦係数 / 耐摩耗性 |
研究実績の概要 |
PLA/HEAの極圧性は,化学構造に基づく摩擦面における反応膜の形成にあると考えられる.また,摩擦面における化学反応は,PLA/HEAの極性に基づく鋼表面への吸着がきっかけと考えられる.そこで,吸着の影響を検討するために,従来吸着型ポリマーとして知られるメチルメタクリレートを多量に含むポリメタクリレートPMMAを用いて,ポリマーの吸着性能が境界潤滑下のポリマー添加油の摩擦摩耗特性に与える影響について調べた. ポリマーは極性の影響を拡大して観察するために,メチルメタクリレートが分散して存在するR-PMMAと末端にメチルメタクリレートをブロック重合したB-PMMAを準備した.B-PMMAの境界摩擦係数はR-PMMAに比べて小さく,耐摩耗性もB-PMMAの方がやや高いことを見出した.また,B-PMMAとR-PMMAの油膜厚さを測定したところ,ナノメートルオーダーでB-PMMAの膜厚はR-PMMAに比べて10倍程度の厚さになり,ブロック重合の効果が認められた.一方で,ポリマーの溶解性を高めた基油を用いた場合には,ブロック化の優位性は認めらなった.つまり,ポリマーの吸着性が高いほど境界潤滑での摩擦係数は低く,耐摩耗性は高くなった.すなわち,PMA/HEAの極圧性の要因に,ポリマーの吸着性が影響していると推察される. 従来型添加剤のジアルキルジチオリン酸亜鉛ZDDPを対象に,そのアルキル基の構造を操作し,摩擦摩耗特性を調べた.プレイマリタイプで直鎖状のものと分岐状のZDDPでは,摩擦係数に違いはないものの,耐摩耗性については分岐状のものの方が優れていた.また,セカンダリタイプのZDDPは,プライマリタイプに比べて摩擦係数は低くなり,耐摩耗性も高いことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はPLA/HEAの摩擦摩耗特性に与える影響を,化学構造に基づく摩擦面における吸着性と反応性のそれぞれの観点から考察する予定であった.ポリマーの入手に遅れが生じたために,反応性については次年度に持ち越すことになったが,ポリマーの摩擦摩耗特性に化学構造に基づく吸着性が影響することを明らかにした.一方で,ポリマーの化学構造に基づく摩擦面との反応性については,予定よりは遅れたものの計画していたポリマーを入手できたことから,年度内に摩擦摩耗特性を評価している.反応性に関する考察には機器分析が必要であり,2021年度に急ぎ実施する. ポリマーの入手に時間を要した一方で,当初2021年度での実施を計画していた「添加剤の化学構造に基づく摩擦面における反応機構の解明」に関する研究の一部を前倒しで実施した.予定を前倒した部分で,ポリマー単体に対する反応性に関する分析と考察を行えることから,研究は計画通りにおおむね順調に進んでいるとした.
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今後の研究の推進方策 |
当初2020年度に実施予定であった「PLA/HEAの化学構造に基づく摩擦面における反応機構」の一部を2021年度に持ち越すことになったが,計画当初の2021年度分の内容は期間内に実施可能である.したがって,本研究は当初計画通りに推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリマーの入手に遅れが生じたために,摩耗面の分析用の委託費を2021年度に持ち越すことになった.また,この遅れを活用して2021年度に実施を予定していた研究の一部を2020年度に前倒しして実施した.したがって,当初予定していた2021年度の計画に変更はなく,前倒しした部分で,ポリマー入手の遅れに伴う分析を実施する. 消耗品については,2020年度に計画していた費用よりも少なく済んだが,研究に関する打合せはCOVID-19の影響でWEBシステムを利用することが多くなった.このため,2021年度には2020年度の差分を利用して,WEB打合せに必要な消耗品を購入する予定である.
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