研究課題/領域番号 |
20K04255
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
大石 義彦 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90617078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抵抗低減 / 気泡 / せん断応力 / 省エネルギー / 船舶 / 乱流 |
研究実績の概要 |
2020年度は,【1】回流チャンネル水槽によるせん断応力測定,【2】異径気泡による乱流摩擦への時間応答性効果の検証,【3】長尺平板のせん断応力に重点を置いた研究プロジェクトを設定し研究を遂行した. 【1】に関して,乱流構造のプロセスであるバースト現象そのものをせん断応力計から直接計測できる方法を模索し,開発した応力計の原理や実証実験について,光学系の国内雑誌OPTRONICSに掲載され,成果が一般の方に理解できるように公表した.光ヘテロダイン式せん断応力の計測精度を向上させるため,光源を改良し検討した.この成果は日本機械学会北海道支部学生講演会にて公開した. 【2】に関して,水平壁面におけるコンタミネーションの低い条件による気泡流においてせん断応力と気泡の可視化の同時計測よりせん断応力とボイド変化の関係性について国際雑誌であるInternational Journal of Heat and Fluid Flowに掲載され,公表した.自然に発生するボイド波が摩擦抵抗にかかわる重要なデータで,気泡による摩擦抵抗低減を向上させる人工ボイド波による低減効果を裏付ける重要な成果を示した.特に,混相流シンポジウムにて研究代表者が基調講演をし、水平壁面における気泡クラスター形成について定量評価を行ったことを一般に広めた.なお,混相流シンポジウムにて日本混相流学会論文賞の受賞した. 【3】に関して,400m曳航水槽実験によるせん断応力の解析を行い,気泡分布画像とせん断応力の関係およびボイド波による摩擦抵抗低減について詳細な解析を行った.この成果を研究代表者(大石)が国内学会の可視化シンポジウム(可視化情報学会)、流体工学部門(日本機械学会)にて公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光ヘテロダイン式せん断応力計の開発にめどが立ち,研究成果が上がっている.さらに精度を上げるための検証方法が確立し,せん断応力計検定装置を完成させた.研究実績で示した各項目について状況を評価する. 【1】について,光ヘテロダイン式の参照ビーム法とダブルビーム法を実施、比較し精度の向上について検証した.また,気泡混入時のせん断応力の計測に成功した.ビート信号が絶えず変化する解析はこれまでの信号解析の中でも複雑なものとなっている.条件付きサンプリング法を追加したアルゴリズムを加えることにより,高時間分解能の生かした応力の変動成分の抽出に成功した. 【2】について,研究業績よりボイド波による低減効果の向上が確認され,メカニズムの解明が進みつつある.学会発表や論文投稿が計画的に進行しており,人工ボイド波の【3】への展開に大きく貢献した.
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今後の研究の推進方策 |
液体用のせん断応力計は既存装置が衰退し,船舶および模型船実験で使用する代替えの測定機器がない.本研究課題はせん断応力計の開発であり,光ヘテロダイン式のせん断応力が乱流などの無秩序な変動がある流れを測定できるか否かを検証する.上記,①~③について今後の研究の推進方策をまとめる. ①気泡のクラスタ形成によるボイド波による検証と個々の気泡と長波長のボイド波までの摩擦抵抗低減における周波数応答性の詳細を調査する. ②乱流の要素である摩擦速度,縦渦移流速度,レイノルズせん断応力ピーク層の流体速度,バッファ層のバースト移流速度,気泡移流速度,および主流速度との関連性を明らかにする.これらを現象ステージ別に定量可視化することでメカニズムの解明とする.境界層中の気泡は境界層の位置と気泡サイズによる移流により水平流においても2体干渉が誘発される.異径気泡発生装置を設計し,サイズが大きく異なる場合のボイド波動の生成効率と低減効果を調査する.この効果を調べるためには本課題のせん断応力計を利用し,時間応答の100~1000Hzの要素を解明する. ③高時空間分解能をもつPIVとの同期計測 空間レンジ1μm(~wall unit)から10m(~船)まで10の7条倍をもつ混相乱流へ粒子画像速度計測法(PIV)を適用し,せん断応力計で測定された応力値とレイノルズ応力分布との比較を行う.光計測による気泡および応力同時計測の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
光ヘテロダイン式のせん断応力計測の検証時にこれまでのデータ記録装置では1MHzで記録は可能であったが短時間でしか記録できなかった.新規で高速データ記録を導入が必要となった.また,誤差評価を行うためには1MHzで1分以上の記録ができる記録装置が追加が必要であることが判明した.せん断応力計の記録装置を変更したため,データ記録用の機材の検討が実証実験が計画通りに進まなく検証が遅れた.さらに,検証後に入手困難となったため次年度使用額が生じた.
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