研究課題/領域番号 |
20K04260
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
福島 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (50725322)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオン液体 / 粘性係数 / 拡散係数 / 微細流路 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
本年度は単鎖を持つカチオンと対称性の異なる3つのアニオンを組み合わせたイオン液体を用いて計算を行った。カチオンはC4mim+及びC3Omim+の2種類を用いた。これは、炭素鎖の一部を酸素原子に変化させることで電荷の分布を変化させ、その影響を明らかにする為である。アニオンとして球対称のCl-,四面体構造を持つBF4-及び六面体構造を持つPF6-を用いた。最初にBulkの系を作成し、密度及び粘性係数を計算した。また、系に電場を印可してそれぞれのイオンに運動量を与え、液体の拡散係数を計算した。その結果、どのイオン液体でも密度は実験値と良い一致を示すが、粘性係数は過大評価し、拡散係数は過小評価した。また拡散係数は平衡分子動力学シミュレーションを用いての評価も行ったが、実験値を過小評価していた。これは、静電ポテンシャルの過大評価が原因と考えられる。その後、微細流路内にイオン液体を封入した系を作成した。固体壁面を一定の速度で動かすことでイオン液体内部に剪断を生じさせ、生じた剪断応力の大きさと速度勾配の大きさから粘性係数を求めた。また、Bulkの時と同様に電場を印可することで拡散係数を求めた。また、分子数を変化させて流路幅の異なる2つの系を作成した。その結果、粘性係数は流路幅に依存しており粘性係数はBulk状態と比べて小さくなった。原因の一つとして固体壁面に存在する電気二重層が作り出す静電ポテンシャルの影響ではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の計画では、側鎖を一つだけ持つカチオンと対称性の異なるアニオンを組み合わせて種々のイオン液体をモデル化し、輸送特性に大きな影響を及ぼす粘性係数及び拡散係数を評価すること及び微細流路内部における上記の物性を評価することで概ね目標通りと言える。しかし、一部で粘性係数を過大評価するなど、使用したポテンシャルの妥当性が低いという問題点があり現在新規ポテンシャルを用いて再計算を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度の追加計算を終了させた後、複数の側鎖を持つカチオンと対称性の異なるアニオンを組み合わせてイオン液体をモデル化し、微細流路内におけるイオン液体の粘性係数及び拡散係数を評価する。さらに、次年度の数値モデル化を行うに当たり先行研究の調査をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で学会や研究打ち合わせがすべてオンラインになったため旅費がかからなかったこと及び参加する学会を減らしたため参加費が生じなかったため、次年度使用額が発生した。本年度の使用計画は以下の通りである。 計算機購入 : 60万円、学会参加費 : 5万円、データ保存用HDD : 10万円、英文添削費用 : 11万円
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