研究課題/領域番号 |
20K04263
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
本澤 政明 静岡大学, 工学部, 准教授 (50516185)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 磁気機能性ナノ流体 / 磁性流体 / 鎖状クラスター / 配向性 / ナノロッド / 熱流動 / 熱物性 |
研究実績の概要 |
磁気機能性流体とは,外部磁場に応答し,その性質を変化させる機能性流体の一種である.なかでも磁気機能性ナノ流体は,粒径が10ナノメートル程度の強磁性粒子を水やケロシンなどに安定分散させた流体であり,一般的には「磁性流体」として知られている.磁気機能性ナノ流体では,磁場印加によって内部の磁性ナノ粒子が磁場方向に鎖状クラスターを形成し,熱伝導率などの物性値変化に加え,異方性が生じることが知られている.磁場印加時の鎖状クラスターの形成は,磁気機能性ナノ流体の応用の際には大きな問題となることがあるが,本研究ではこの磁性ナノ粒子の配向性を積極利用することで.磁場印加時の熱特性の向上・異方性強化・高度熱流動制御を目指している.配向性積極利用のため,流体内部には棒状の磁性ナノロッドを添加した磁性ナノロッド分散型磁気機能性ナノ流体(以下,MNR-MFと呼ぶ)を調製する.このMNR-MFを用いて,磁場印加時の熱物性・異方性,熱流動特性へ磁場強度・磁場方向によるナノロッド配向性が与える影響を調べる事を目的とする.本年度は,2年目となり,実施計画に基づき研究を進め,以下に示すような結果が得られている. (1)磁性ナノロッドの合成・MNR-MFの調製:磁性ナノロッドは安定的に合成が可能になった.MNR-MFは界面活性剤の選択で,わずかに沈殿がみられるものの水に対して比較的安定分散させることが可能になった. (2)MNR-MFの内部構造可視化:磁場印加時のMNR-MF内に形成されるクラスター構造の可視化を行った.比較のため,内部粒子が球形の流体も同様の分散方法で調製し,観察を行った. (3)ミニチャネルにおける熱流動特性:内部粒子が球形の磁気機能性ナノ流体によるミニチャネル内の熱流動特性に対し,従来の大きなスケールにおける結果とは異なり,磁場印加時に伝熱抑制などが観察され,今年度は本現象を詳細に調べた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MNR-MF作成に当たり,磁性ナノロッドをどの程度安定分散できるかが問題であったが,界面活性剤の選択等により,わずかに沈殿は見られるものの,水へ比較的安定分散したMNR-MFを作成することに成功した.また,物性測定に対しては,内部構造可視化の実験装置が完成し,可視化実験をスタートしている.また,物性計測についても強制レイリー散乱法の装置構成などの準備を進めている.熱流動特性についても,本年度は,球状の磁性ナノ粒子が分散された磁気機能性ナノ流体の熱流動特性を調べるにとどまったが,ミニスケールの熱流動特性でこれまでにない特異な変化が観測された.以上から,研究はおおむね順調に進展しているとした.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,調製した水ベースMNR-MFを用いて,内部構造の可視化・異方性熱物性の計測・ミニチャネルにおける熱流動特性・乱流域における磁場による流れの制御を順次実施していく予定である.内部構造可視化・ミニチャネルにおける熱流動特性はすでに完成した装置で引き続き研究を継続する.また,異方性熱物性については,強制レイリー散乱法の装置構成を完了させ順次進めていく予定である. 現在の本研究における問題は,磁性ナノロッドの収量向上とより安定分散性の高いMNR-MFの調製である.磁性ナノロッドの収量向上に向けては,合成をより効率的に行うことが出来つつあるが,現行法以外の合成方法も併せて検討している.安定分散性の高いMNR-MFの調製については,専門業者への外注分散も依頼して比較を行っている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,ミニチャネルの熱流動実験装置作成・改良,磁性ナノロッド合成・MNR-MF調製・分散法検討に向けた原材料・界面活性剤・容器等の購入に助成金を利用した.ミニチャネルの熱流動実験装置作成・改良では,主にはヒーターや電源購入,その他,機械部品等の購入に充てた.一方で,旅費については,今年度も学会がすべてオンラインになったため,発生しておらず,次年度使用額が生じている. 次年度は,国内学会は対面実施が増えることが予想されるため,積極的に国内学会・オンライン国際会議での成果発表を行うとともに,熱流動特性・熱物性測定に向けたセンサー類の購入に助成金を使用する予定である.
|