研究課題/領域番号 |
20K04264
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 靖仁 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40346078)
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研究分担者 |
酒井 康彦 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20162274)
岩野 耕治 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20750285)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 噴流 / 乱流 / 数値シミュレーション / 乱流エネルギー減衰 |
研究実績の概要 |
本研究目的は軸対象噴流を中心とする噴流の拡散混合制御と関連する自由乱流中での乱流の減衰機構の解明である.初年度である令和2年度は,より高レイノルズ数乱流の数値シミュレーションを可能にするためのOpenFOAMを用いたLarge-eddy simulation(LES)による計算コードの構築とDNSによる自由乱流場での減衰挙動の解明を中心に行った.
旋回噴流場に関する計算においては,これまで直接数値計算(DNS)で行ってきたレイノルズ数Re=2200の流れに加えて,Re=22000の流れ場に対する計算を行った.Re=2200の流れ場に対しては,DNSとLESを比較すると定性的にはおおむね一致した結果が得られたが,逆流領域の出現がLESの方がやや弱い(領域が狭い,逆流速度が小さい)結果となった.この原因は不明であるが,一般的なDynamic SGSモデルより,壁面近傍の乱流場を良く再現するとされるWaleモデルの方がより良い結果を示した.またRe=22000の流れ場における旋回の有無の影響は,Re=2200の場合とほぼ変わらないが,レイノルズ数が高くなると旋回の影響が強くなり,半径方向,噴流中心方向に拡散が広がる,またそれにより,各速度変動強度が中心軸上で大きくなり,また,半径方向に分布が広がることが明らかにされた.さらにSpectral proper orthogonal decomposition (SPOD)の結果から,Re=2200においては周方向に動きを伴う構造が見られるが,Re=22000においては,r/D>1の領域(rは半径方向長さ,Dは噴流直径)で周方向に動きを伴う構造と半径方向に拡散する構造が見られ,r/D<1では半径方向に拡散する構造がはっきりと見られた.したがって,噴流出口付近において,レイノルズ数が高いほど拡散混合していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように,旋回を伴う噴流場については,テストしたレイノルズ数条件下では,おおむね同様の流れ場を示した.一方ヴォルテクスジェネレータによる噴流制御については,ヴォルテクスジェネレータ近傍の計算メッシュの構築に想定より時間がかかったが,こちらも計算コードを構築できた.また乱流減衰に関する研究においても興味深い結果が得られた.したがって,研究はおおむね予定通り進行しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き噴流制御と乱流減衰に関する研究を中心に遂行する.特にコロナ禍において,換気を伴いながらエアコンを効率よく稼働させたい場合などを考えると,周囲流体をできるだけ巻き込まずスポット的に噴流を噴射する,すなわち噴流の制御でも特にその抑制が求められる.したがって令和3年度は,それを一つの目的として研究を行う.特にヴォルテクスジェネレータによる噴流制御は工学的応用が容易であるため,実用化に近いと期待される.またエアコンの吹き出し口は通常円形ではなく矩形であるため,ヴォルテクスジェネレータの矩形噴流に対する影響なども調査していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍ということもあり実験研究が想定通り進捗しなかったことが一因である.次年度は数値シミュレーションを発展させるとともにそれを踏まえて実験も進める予定である.
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