本研究課題では,自動車用トルクコンバータ内の3次元非定常流動を理解できる実用的計測法を開発し,トルクコンバータの3つの翼列間の3次元非定常流動構造を捉えることを目的とした.最終年度は,3次元非定常流動解析を実現する「多重露光ディジタルホログラム流速測定法」と「高空間分解能をもつ局所渦度評価法」の開発を継続した.研究期間全体の研究成果は次の通りである. まず,1台のカメラで3次元高速流れを測定する「多重露光ディジタルホログラム流速測定法」については,立方体キャビティ内流れの数値解を用いた性能評価を行い,トレーサ粒子位置および移動量測定結果はともに観測画像面内成分・奥行き方向成分のRMS誤差がそれぞれ画素分解能以下,空間分解能以下であることを示した.基本実験では,噴流の測定結果を2次元PIV測定結果と比較することで,流速測定量の平均値・変動量の信頼性を評価した.トルクコンバータ内部流れの流速測定では,インペラ流路部,タービン流路部に相当する奥行き範囲で,それぞれトルクコンバータの基本的な循環流れと一致する速度ベクトル場が同時計測できることを実証した. 次に,単一トレーサ粒子で渦度を評価する「高空間分解能をもつ局所渦度評価法」については,回転角により照射光の偏光特性が変換される延伸フィルムをトレーサ粒子として用いた2次元局所渦度計測手法を提案し,数値的及び実験的に性能評価を行った.偏光板を通して延伸フィルムをホログラム観測し,その透過光の点滅周波数から回転速度,周波数バイアス法により回転方向を決定し,渦度を算出した.回転円板上の粒子を観測する基本性能試験において,渦度測定結果の測定精度を評価するとともに,静止流体中を運動する平板周りの流れの応用計測では,その渦度分布を定量化することによって提案手法の実用性を示した. 以上の結果について国内講演会で2件の口頭発表を行った.
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