研究課題/領域番号 |
20K04275
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
堤 誠司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (10446601)
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研究分担者 |
清水 太郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (00446600)
赤嶺 政仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00835465)
尾亦 範泰 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (80849258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 振動燃焼 / ロケットエンジン / LES |
研究実績の概要 |
昨年度,振動燃焼研究のベンチマーク燃焼器であるContinuously Variable Resonant Combustor (CVRC)を対象に,圧縮性Large-Eddy Simulationを用いた解析を実施した.本解析では入口酸化剤温度を変化させることで,燃焼騒音,1次長手モード(1Lモード)の燃焼振動,また1Lモード燃焼振動の振幅変化(増幅/減衰)やその遷移過程を再現することができ,振動燃焼をモデル化するために必要となる多量の学習データを作成することができた.本年度は得られたデータから振動燃焼の発生,増幅の原因を解析し,予知・制御モデルを構築する上で必要となる物理的な因果関係の解明,及び特徴量の抽出に取り組んだ.振動燃焼発生時の物理的な因果関係を調べるため,時系列データの因果推論を行う移動エントロピに独自に開発した情報エントロピの評価法を組み合わせたクラスタリング移動エントロピを適用した.振動燃焼は流体,化学反応,音響の3つの物理現象が関連していることから,音響に関連する圧力,化学反応に関連する発熱率,そして流体場に関連する燃料と酸化剤の質量流束を対象に因果関係を分析した.振動燃焼の振幅の大きさによって圧力と発熱率の相互干渉が変化すること,また燃料と酸化剤の移流に関連する因果関係は大規模渦構造の有無によって変化することが解析された.一方,過去の実験研究から,振動騒音から振動燃焼への遷移時には間欠的な圧力振動が発生することが分かっているが,昨年度得られた結果ではこのような間欠現象を再現できてはいないことが分かった.そこで,より計算コストが軽く多くの条件を解析可能な軸対象2次元の解析を新たに実施し,より広範囲なデータの取得を行った.今後,これらの学習データを利用し,振動燃焼発生に関する因果関係や特徴量を明らかにし,予知・制御するモデル構築を行っていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CVRCを対象に圧縮性LESを利用し,酸化剤噴射温度を徐々に変化させることで振動燃焼の有無,振幅変化,遷移過程に関する解析結果を昨年度に得た.本年度はそれらのデータを利用し,振動燃焼発生に関する因果関係や予知・制御するモデル構築に向けて必要となる特徴量を,クラスタリング移動エントロピや従来からの演繹的解析を用いて調べた.その結果,振動燃焼発生時の振幅の増幅と流れの大規模渦構造が関係していることが分かり,大規模渦構造を引き起こす特徴量は酸化剤入口流れの速度変動であることが明らかになった.一方,振動燃焼発生時に発生することが実験的に確認されている間欠的な振動の発生は確認できていないことから,CVRCの軸対象2次元解析にも新たに着手し,酸化剤入口温度を徐々に変化させることによって間欠的な現象の再現を試みている.間欠的な振動を再現できれば振動燃焼の発生に重要となる因果関係や特徴量を明らかにすることができ,その結果として振動燃焼発生の予知と制御を可能とする縮約モデルの構築が可能となる. 以上のことから,振動燃焼に関する縮約モデルの構築が進んでおり,概ね順調に進展しているとみなすことができる.
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今後の研究の推進方策 |
燃焼騒音から振動燃焼への遷移現象を明らかにするため,より広範な条件で長秒時のデータ取得が可能な2次元解析を引き続き進める.そして,従来の演繹的解析や,クラスタリング移動エントロピ等による帰納的解析の双方を利用することで,燃焼騒音から振動燃焼への遷移過程に関する因果関係の解明や特徴量を明らかにする.そして,得られた知見を利用し,振動燃焼の予知と制御を可能とする縮約モデルを非線形回帰モデル等に基づき開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会参加費を計上していたが,すべてオンライン開催となったため.研究計画を加速させるため次年度に物品費とするか,最終年度に返還する予定である.
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