研究課題/領域番号 |
20K04277
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 一道 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80453140)
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研究分担者 |
藤井 宏之 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00632580)
渡部 正夫 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30274484)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気液相変化 / 気体論境界条件 / 凝縮係数・蒸発係数 / Boltzmann equation / 混合気体 / Enskog-Vlasov equation |
研究実績の概要 |
本研究では,蒸気分子(凝縮性気体分子)および非凝縮性気体分子(以下,気体分子)からなる混合気体について,気液界面における蒸気分子の凝縮確率(凝縮係数)および蒸発確率(蒸発係数)を求め,気体分子運動論に対する気液界面の境界条件を構築することを主たる目的としている.また,得られた知見を混相流体力学解析(キャビテーション気泡の崩壊や液体乾燥技術)に応用することを第二の目的としている. 1.気体分子運動論解析を用いて,高圧気体環境下における気液平衡状態の蒸気分子の蒸発確率・凝縮確率を調べた.その結果,気体が高圧になるほど,蒸気分子の蒸発確率・凝縮確率が小さくなることがわかった.これは,気体が高圧になると気液界面近傍に存在する気体分子の数が多くなり,その結果,液体から蒸発しようとする蒸気分子・もしくは凝縮しようとする蒸気分子が,その気体分子と衝突することで,蒸発・凝縮が妨げられることによる.さらに,気液非平衡状態においても,平衡状態と同様に,気液界面の気体分子の存在により蒸気分子の蒸発・凝縮が抑制されることがわかった. 2.気液平衡分子動力学を行い,気液界面に凝縮する分子と反射分子の特性を調べた.特に気液界面を通過する約10万個の分子情報についてデータ解析を行い,反射分子・凝縮分子の特性を調べた.この結果,気体から気液界面に向かう分子の法線方向速度が小さいほど,気液界面において分子は反射しやすくなることがわかった. 3.液体レーザーアブレーション中に発生する気泡の崩壊現象について数値解析を行った.その結果,気泡崩壊に伴う蒸気分子の凝縮確率は,上記2で得られた蒸気の凝縮確率よりも著しく小さくなることが分かった.このことは,1の研究と関連して,レーザーアブレーションで発生した気泡中の蒸気分子以外の異分子が,蒸気分子の凝縮を妨げていることを示唆していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,当初予定していた計画が順調に進み,気体分子運動論・分子動力学法を用いて,混合気体中における蒸気分子の凝縮確率と凝縮確率を求めることに成功した.特に,これまでの解析では,蒸気分子と気体分子からなる混合気体について,気液平衡状態の蒸発確率・凝縮確率しか求めていなかったが,気液非平衡状態においてもこれらの確率を求めることができた.また,キャビテーション気泡の崩壊問題に対しても解析を行い,気体分子運動論・分子動力学法で得られた知見を使用することができた.これら結果から,当初の計画以上に本研究は進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,2020年度の結果を踏まえ,以下のことに着目して研究を行う. 1.気体分子運動論解析を用いて,混合気体(蒸気分子と気体分子)中を高速で移動する液膜に関する数値解析を行う.この結果より,非常に強い非平衡状態下において,蒸気分子の凝縮に対する気体分子の影響を調べる.この結果は,キャビテーション気泡の崩壊時の極限物理の解明の一助となることが期待される.また,高速で衝突する液膜の問題に関しても数値解析を行い,液体の合体に与える非凝縮性気体の影響についても調べる. 2.分子動力学法を用いて混合気体中に蒸発する分子の蒸発確率を取得する.今年度の結果より,純粋な蒸気中に対する分子の蒸発確率はわかっており,その結果と比較するとことで,気体分子の影響を明らかとする. 3.1、2、で得られた知見を基に,混相流体力学に対して解析を行う.特に前年度に引き続き,液体レーザーアブレーション中に発生する気泡の崩壊現象について数値解析を行い,気泡中に含まれる異分子が蒸気分子の蒸発・凝縮に与える影響を明らかとする.
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