研究課題/領域番号 |
20K04279
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
米村 茂 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00282004)
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研究分担者 |
山口 浩樹 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50432240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子流体力学 / クヌッセン力 |
研究実績の概要 |
マイクロ・ナノスケールの空間で気体温度場に不均一がある場合、気体分子によって固体表面にもたらされる運動量にアンバランスが生じ、クヌッセン力と呼ばれる力が固体に働く。本研究では、クヌッセン力を二物体に働かせて相対運動を熱的に駆動する動力機構を構築することを目的とする。そのために、理論的な考察により、クヌッセン力が得られる条件を検討し、数値シミュレーションによってその成否を確かめ、その結果を検証することを目的として実験も行う。 令和2年度までにノコギリ刃形状の微細な表面構造をもつ基板に働くクヌッセン力を数値シミュレーションによって調べ、無次元クヌッセン力(単位面積あたりのクヌッセン力/周囲圧力)はクヌッセン数が1付近で大きくなりピークを示し、クヌッセン数が1から小さくなっても大きくなってもクヌッセン力は消滅することを明らかにしている。令和3年度はこのようなクヌッセン力の生成メカニズムを解明するために、クヌッセン力が働いている面に入射する分子に着目して応力を理論的に評価し、シミュレーションで得られた応力分布を再現することに成功した。このことは、理論解析で用いられた考え方でクヌッセン力生成のメカニズムが説明できることを示しており、生成メカニズムを解明したと言える。 シミュレーションで得られたノコギリ刃形状表面にはたらくクヌッセン力生成の検証を行うため、ノコギリ刃形状表面をもつ基板の上方に物体を配置することによって物体を駆動させる実験を行った。しかし、クヌッセン数を確保するためには基板と物体間の距離を短くする必要がある上に、駆動するためには基板と物体間の平行度を維持する必要があるため、様々な機構を試行したものの駆動を観測するには至らなかった。そのため、真空容器内での計測を可能とするように改良するとともに、新たな機構の設計を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験における検証で観測にやや苦労しているが、理論解析と数値解析によりメカニズムが解明されたことは大きい。メカニズムの解明により理解が進んだため、今後の研究を進めやすくなった。
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今後の研究の推進方策 |
数値解析においては、解明されたメカニズムに基づき、クヌッセン力生成に有利な基板の表面構造を考察し、数値シミュレーションによって再現し検証する。
また、実験においては、改良した機構を用いることによって物体の駆動を観測する。そして、物体に働くクヌッセン力についても評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計測に問題が生じていることから実験で使用する一部が次年度使用となった。実験系を改良する際に翌年度請求分と次年度使用額を合わせて使用する。
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