本研究は,ペンギンの体毛を規範としてリブレットを製作し,3次元物体に適用して,流体抵抗低減効果を明らかにする。これまでに,ポリイミドフィルムのレーザスキャン加工によって,リブ断面が台形のペンギン模倣リブレットフィルムを実現した。平板に貼付して回流水槽で抵抗計測実験を行い,抵抗が最大2%低減(s+=1.6のとき)することを明らかにした。また,リブ方向が流れに対して15度偏差した方が低減率は増大した。この成果は Bioinspiration & Biomimetics 誌に投稿して掲載された。 さらに,ペンギン胴体のような3次元的な紡錘体にリブレットフィルムを貼付して回流水槽で抵抗計測した結果,抵抗が最大3.5%低減した。平板で同じ流体条件(s+=7.29)のときは抵抗低減率0.6%であり,紡錘体の場合の方が平板場合よりも抵抗抵抗効果が大きいことが分かった。流れ場の可視化実験の結果,紡錘体後方の流れの剥離領域が若干小さくなっていることがわかった。よって,紡錘体での抵抗低減効果の向上は,圧力抵抗低減によるものであることが示唆された。 最終年度は,これまで研究室の回流水槽が小さく紡錘体が縮小モデルであったことに対して,紡錘体モデルおよびリブレットフィルムを実際のペンギン胴体と同程度の大きさに拡大することを試みた。大面積のリブレットフィルムを製作するために,紫外線硬化インクのインクジェットプリントによる製作を試みた。しかし,研究室の回流水槽で流れ方向のみ拡大したモデルで実験したところ,抵抗はほとんど低減しなかった。考えられる原因の一つは,製作手法によるリブ断面形状の細部の違いであり,今後の研究課題である。 今後は,紡錘体に関する実験結果を整理して論文投稿を行う。
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