研究課題/領域番号 |
20K04288
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
申 炳録 宮崎大学, 工学部, 教授 (30235767)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流体工学 / 数値流体力学 / 気液混相流 |
研究実績の概要 |
圧縮性-非圧縮性混在の非定常性の強い相変化を伴なう気液二相流の解析は数値計算による方法が適している.このような流れの数値解法に前処理法を導入した差分解法があるが,そのほとんどが水-理想気体系の状態方程式を用いるため,極低温流体や液体燃料などの熱力学的特性が著しい気液混相流を総合的に対応できず正しい解を求めるのは困難である.そこで,本研究では前処理法をベースに多成分実在流体の混相流解析に包括的に対応できる状態方程式の定式化と,圧縮性-非圧縮性流れの非定常高効率計算のための数値流束関数を提案し,全マッハ数の気液混相流のための新しい数値解法の開発を計画した. 新しい数値解法を提案するため,まず初年度は従来の前処理法を再検討し,いかなるマッハ数に対しても安定かつ解像度の高い数値流束関数の考案に着手した.最近,本研究者らにより非定常気液混相流のための時間に対して整合性を保つ前処理法が開発され,計算時間の大幅な短縮と時間積分の問題が解決されたが,流れにおいては接触不連続面での不安定や精度低下の問題を完全に取り除くことができなかった.この空間的な不具合を解消するため,種々の上流差分法を用いいくつかの不連続ジャンプを伴う流れに対して検討し,上流スキームにおいて内挿関数の選びが安定かつ鋭い不連続面の再現に及ぼす影響,また,前処理行列の構成が解の不安定や精度低下に及ぼす影響などについて詳細に調べた. 次に,前処理行列の依存問題を解決するため新たな数値流束行列の考案に取り組んだ.行列が持つ固有値,音速と移流速度間の隔たり問題を含めエネルギー式の基礎変数等について再検討し,広い範囲の音速分布に対しても特異性がほとんど表れない前処理行列を構成した.この行列を用い不連続飛びの大きい衝撃波管の問題を解き,広い範囲のマッハ数に対して有効であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広範囲のマッハ数に対して安定かつ解像度の高い数値流束関数を考案するなど,交付申請書の研究計画に記した項目について,当初の目標をほぼ達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究が当初の計画通り順調に実施できたので,今後は,引き続き,熱力学的特性が著しい実在流体の解析に包括的に対応できる状態方程式の定式化など,交付申請書の研究実施計画に記した項目について研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた外国出張(7月にアメリカのハワイで開催されるICCFD11)と国内の出張(12月に沖縄で開催された第34回数値流体力学シンポジウムなど)が新型コロナウイルス感染防止のため日程が変わり出張できなかったことと,コロナの影響で資料整理および計算補助に必要な研究補助員の活用が減少したためである.これらの旅費及び参加費に相当する予算を次年度の学会活動に使用する.また,研究補助員の活用計画を強化する.
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