光が全反射するとき、媒質2の極浅領域に光を照射することができ、高エネルギーのパルスレーザを使用すれば、非常に小さい領域に光のエネルギーを閉じ込められるので、高いエネルギー密度が実現できる。そこでエバネッセント光で極小点の熱源を構築し、新しいインクジェット技術を創製することを目標にした。入射角を臨界角以上に設定してレーザを全反射させたとき、期待していたインクジェット現象は発現せず、むしろその前に全反射点であるプリズム内部が破損する問題が発生した。これは思い描いていた実験は失敗したことを意味している。パルスレーザの入射角が臨界角未満の時にレーザはプリズムを突き抜けて水面の内側で全反射してしまったが、インクジェット現象の発現を確認することができた。両方に共通して言えることは、全反射点の内側で特殊な現象が生じているということ。そこで金ナノ粒子のプラズモン共鳴を用いることで、エバネッセント光強度を2倍以上にすることできるのではないか考えた。ガラス表面に金ナノ粒子を配置し、エバネセント光を照射することで、プラズモン共鳴を励起するという新しい構成を考えた。純粋なエバネッセント光では5MWでプリズムが破損してしまったため、それより低エネルギである3.8MWでインクジェット現象を起こした。そしてこの時、水滴は鉛直方向に20cm飛散した。この現象は、金ナノ粒子×エバネッセント光によるプラズモン共鳴によって電界強度が上昇することで、水温が急激な上昇を起こし、気化・プラズマ化によって、インクジェット現象が発現したと考えられる。金ナノ粒子が寄り集まっている状況を考慮したシミュレーションを行い、電界強度を分析した。金ナノ粒子単体による電界強度の向上は5倍程度となった。これに対し、2つのナノ粒子間距離0~0.5nmの時、平均的には50倍も増強された。これらによって温度上昇が引き起こされる事が判明した。
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