研究課題/領域番号 |
20K04294
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
板野 智昭 関西大学, システム理工学部, 教授 (30335187)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 球面クエット流れ / 乱流遷移 / 数理モデル / 実験流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、数値計算と実験の両面から球面クエット流の乱流遷移を明らかにするこである。 海外の先行研究を規範として、2021年度に各部品のアッセンブルが終わり、出来上がった球面クエット流の実験装置で繰り返し実験を行ってきた。以下に挙げる各項目について現在、装置の改良等を進めている。数値計算面では、ニュートン法から特定された流れの解を使って、流れの中に疑似アルミフレークを混入した際のレーザー光反射強度を求める計算コード開発が完了した。 1) 過年度、高精度トルクメータを導入した遷移の測定も行っていたが、内球が流体から受けるトルクが機械的摩擦由来のトルクに比べ相対的に小さくなり測定が困難となることが問題となっていた。この困難を打開するため、エアベアリング軸受け装置の導入を新たに検討し、必要な材料の選定などを進めている。 2) 遷移を観測するために、トルク測定以外に、フレークを用いた流れの可視化実験を行い、レイノルズ数が400~600の範囲でフレークの反射光に周期的な変動が生まれることを実験で確認した。外球が無回転の場合の球面クエット流の実験を改良を重ねながら繰り返し行い、内球の径に対する隙間の比(β)の値が1の場合について、高い再現性で状態の位相速度が求まることを確認できた。特にシート光が回転軸に対して垂直になるよう光学系の設置を改め、位相速度の特定が測定可能であることを発見した。 3) 上記2)と同じシート光面内でフレークの向きが計算できるようになり、面内の光反射強度と実験結果を比較することができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験面では、海外の先行研究を規範として、2021年度は内外球面、回転ステージ、スピードコントロールモーター、ベアリング、制御装置等について複数の既製品から最適な組み合わせを選定し、球面クエット流の実験装置を完成させた。出来上がった装置を使って球面クエット流の実験を繰り返し行ってきた。導入した高精度トルクメータを用いて遷移の測定も行ってきたが、内球が流体から受けるトルクが、ベアリング等を介した機械的摩擦由来のトルクに比べ相対的に小さくなるため、遷移の測定が正確に行えないことが現在問題となっている。この困難を打開するため、装置の芯だしの問題点等を洗い出すとともに、新たにエアベアリング軸受け装置の導入を検討し必要な材料の選定や購入を現在進めている。これとは別に、フレークを用いた流れの可視化実験を行っている。シート光を回転軸に対して垂直になるよう光学系の設置を改めたことにより、レイノルズ数が400~700の範囲でフレークの反射光に周期的な変動が生まれることをよりクリアに実験で確認できるようになった。外球が無回転の場合の球面クエット流の実験を改良を重ねながら繰り返し行っているが、特に内球の径に対する隙間の比(β)の値が1に等しい場合について、高い再現性をもって遷移後に現れるスパイラルパターンを示す位相速度を測定できるようになりつつある。また、数値計算面では、ニュートン法から特定された流れの中に、疑似アルミフレークを混入した際のレーザー光反射強度を求める計算コード開発が完了した。以上のように研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
我々が一から組み立てた装置は、現状、回転部のシャフトの芯だしが測定の精度を左右する一番の肝になっている。測定精度を上げるためにこのような問題点等を洗い出し実験装置の改良を今後行っていく。また、新たにエアベアリング軸受け装置の導入を検討し必要な材料の選定や購入を現在進めている。 流れの可視化に用いる光学系の角度を改良することで、遷移後に現れるスパイラルパターンをもつ流れの可視化ができるようになったとともに、高い再現性をもって流れの位相速度を測定できるようになった。今後、測定を繰り返して位相速度を正確に割り出し、数値計算結果との比較を行いたい。また、異なる形状パラメータに対してナビエストークス方程式の流れの解のニュートン法を用いたパラメータサーチを行い、この流れの中に、疑似アルミフレークを混入した際のレーザー光反射強度が計算できるようになった。今後、この反射光強度の計算結果と実験の測定結果との比較も行いたい。以上について、できるだけ早い期間に論文等で発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に始まったロシア侵攻により石油価格の変動に伴い、当初追加で購入予定だった外球(アクリル製)の導入が遅れて次年度使用が生じた。価格の安定を見定めた上、本年度夏ごろに改良されたシャフトと合わせて外球を導入し、当初予定されていた外球回転系での流れの可視化に取り組む予定である。
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