研究課題/領域番号 |
20K04295
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大河平 紀司 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (60629210)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ラッカーゼ / ファインバブル / 固定化酵素 / グラフト重合 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ウルトラファインバブル(UFB)水が有するユニークな特性(溶存酸素値上昇効果、洗浄効果)と膜処理技術を駆使し、医薬品やパーソナルケア製品(合成香水、洗剤、消毒剤など)などの難分解性の化学物質(PPCPs:Pharmaceuticals and Personal Care Products)を連続運転にて高効率に分解除去可能な技術を確立することを目的としている。 令和2年度は、新規に購入したUFB発生装置にて調製したUFB水を用い、酸化還元酵素であるラッカーゼの活性に及ぼす影響をバッチ反応にて検討した。ポリエチレン製の多孔性中空糸膜にラッカーゼを固定化する際の最適条件の探索を行った。ラッカーゼ活性評価には、種々のpHに調製した2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)溶液を採用し、酸化による吸光度変化を測定することで活性を算出した。 バッチ反応において、空気または酸素ガスを曝気することで作製したUFB水(air-UFB、O2-UFB)、ブランクとして純水(AQ)を溶媒としてラッカーゼを溶解した3種について、酵素活性の比較を行ったところ、UFBの有無により酵素活性が変化することが示唆された。 多孔性中空糸膜へのラッカーゼの固定化について、電子線グラフト重合法によりグリシジルメタクリレートをポリエチレン製の多孔性中空糸膜にポリマー鎖として導入し、適した官能基を転化することでラッカーゼを固定化できるが、固定化の手法および条件が酵素活性に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスのパンデミックによる影響で、研究活動に制限がかかり、当初予定した計画よりもやや遅れている。 バッチ反応によりUFBがラッカーゼ活性に影響することを確認することができた。具体的には、活性の高さはO2-UFBが最も高く、ari-UFB、AQの順となった。この傾向は反応時間を長くしても同様であり、UFBの効果によってラッカーゼ活性が向上したと考えられる。ただし、どのような効果により活性が向上したかは未解明である。 ラッカーゼ固定化法の検討については、おおむね順調に進行している。静電相互作用による固定化と、ポリマー鎖に共有結合にて固定化する方法を採用し、双方の酵素活性(UFB無し)を比較したところ、共有結合型が圧倒的に高い活性を示すことが明らかとなった。また、固定化の際のpHも大きく影響することが判明し、諸条件の更なる最適化が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ラッカーゼ固定化法について、pH、固定量、ポリマー鎖の密度等の諸条件を更に検討して最適化を行う。また、静電相互作用型と共有結合型の双方について、UFBが活性に与える影響について比較検討を行う。
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