研究実績の概要 |
固定化酵素法は、生体内で生じる複雑な反応を、人工的な基材にて連続的に利用できる方法として注目されている。既往の研究により、酸化還元酵素であるラッカーゼを、電子線グラフト重合法により基材へ積層固定することで、フェノール性難分解性化合物を連続処理できることが明らかとなった。本研究課題では、このプロセスの更なる改善を目指し、ウルトラファインバブル(UFB)に着目した。UFBは直径が1マイクロメートル以下の微小な気泡であり、分散性や気体封入作用などの様々な性質を有する。UFB水が有するユニークな特性(溶存酸素値上昇効果、洗浄効果)と膜処理技術を駆使し、医薬品やパーソナルケア製品(合成香水、洗剤、消毒剤など)などの難分解性の化学物質(PPCPs:Pharmaceuticals and Personal Care Products)を連続運転にて高効率に分解除去可能な技術を確立することを目的とした。 基材から伸びるポリマーブラシに共有結合にて固定化したラッカーゼについて、UFBがラッカーゼの活性に及ぼす影響について検討した。ラッカーゼ活性評価には、空気UFBまたは超純水にて種々のpHに調製した2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)溶液を基質として採用し、酸化による吸光度変化を測定することで活性を算出した。結果、空気UFB水と超純水では前者の方が活性が高いことが判明した。またこの効果は、空間速度が高い領域で顕著になり、さらには基質の濃度が高い場合において特に有効であることが示唆された。
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