研究課題/領域番号 |
20K04300
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 拓 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (40211833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱物性 / 分子動力学 / 液体 / 熱伝導 / 分子熱流体 |
研究実績の概要 |
液体の熱伝導率を決定している分子スケールのメカニズムを分子間・分子内の力学的エネルギーの伝搬に求め、このエネルギー伝搬を分子動力学シミュレーションにより定量的に観測する独自の解析法を用いて、様々な液体中で生じている分子間・分子内エネルギー伝搬の大きさと発生密度(頻度)を網羅的に調べるのが本研究の計画である。液体種として、比較的単純な分子によるものから複雑なもの、実用上重要なものにデータ蓄積を進め、さらにパラフィンなどPCM(相変化物質)として重要なソフトマターまでを対象とする。得られた分子間・分子内エネルギー伝搬の定量データを特徴的な原子団(官能基)ごとに分類し、加算性に注意しながら整理することにより、液体分子の原子団構成と液体に発現する熱伝導率との間に機序を見出す。物性値が既知の物質についてこの手法を確立し、未知の物質の熱伝導率予測や所望の熱伝導率をもつ液体の分子設計を可能にするデータ基盤を確立することを目的とする。本年度は、まず、以前から予備的に解析を開始していた水とアンモニアのバルク液体に対する解析をまとめた。それぞれ水素結合をもつ会合性の液体で、比較的高い熱伝導率をもつ液体であるが、クーロン相互作用が分子間エネルギー伝搬においてなすマクロ熱輸送(熱伝導率)への寄与など、基本的な特性における差異を明らかにすることができた。また、冷媒として重要なフルオロカーボンに研究を進め、計算系の構築を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備的に開始していた水・アンモニアの結果をまとめて成果を上げることができた。また、次年度以降に解析を進めるフルオロカーボンの計算に着手し、計算系を構築しつつある。以上から、研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、まず各種(パー、セミ、分子量)フルオロカーボンの計算データを得て、実験計測を行っているグループと情報交換をしながら分子スケールの解析を進める。また、PCM(相変化物質)など他の応用物質にも解析を進めたい。これらの研究を通じて蓄積が進む分子間・分子内エネルギー伝搬の特性と、それらがマクロ熱物性を決定する機序を解析して新媒質設計のためのデータ基盤を構築する本研究の最終段階については、手法の開発も含めて今後検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に従っておおむね順調に経費を支出したが、学会発表の機会が減少したことなどにより、多少の次年度使用額が出た。2021年度にはさらに研究を進めて、学会発表にかかわる経費や論文掲載料が増加し、2020年度からの繰り越しも含めて使用することが必要になるものと考える。
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