研究課題/領域番号 |
20K04305
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
多田 幸生 金沢大学, 機械工学系, 教授 (20179708)
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研究分担者 |
大西 元 金沢大学, 機械工学系, 助教 (80334762)
春木 将司 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (90432682)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 凍結 / 解凍 / 高周波超音波 / 交番磁場 / 過冷却 / 食品 |
研究実績の概要 |
コールドチェーンの発達に伴って食品を安全かつ美味しく凍結保存する技術の確立が求められている.凍結保存は原理的には,低温化と活性水分の低減により生化学反応の抑制を図るものであるが,凍結の過程で細胞レベルのミクロ現象が生じ,これが各種の凍結損傷に繋がる.したがって,食品の品質を劣化させない効果的な凍結技術の開発が課題となる.本研究では,高周波超音波振動ならびに交番磁場を利用した過冷却域の拡大による氷晶形成の能動的制御を追究する.すなわち,高周波超音波振動の付与によるミクロな振動および交番磁場による静電気的作用を利用して,組織体内の過冷却領域の拡大を図り,それによる高品質な凍結を実現する冷却技術の開発を目標とする. 本年度は,模擬食品として寒天ゲル供試し,高周波超音波振動の付与に伴う発熱作用を利用した組織体の凍結・解凍制御に重点をおいて研究を推進した.その結果,高周波超音波の吸収に伴う発熱作用を利用した組織体内の温度制御により,組織体全域を過冷却状態に移行させ,それを解除することでから急速凍結できることが確認された.また,全域を過冷却状態とする冷却・超音波照射の条件が実験的に明らかにされた.次に,模擬食品の解凍実験行い,高周波超音波は水を透過し,氷に優先的に吸収される性質に着目し,超音波照射を併用した流水解凍実験を行った.その結果、音波吸収に伴う内部発熱効果を利用した均質・急速解凍法としての有効性が実験的に見出された.以上により研究の第一段階として,高周波超音波振動を利用した食品の高品質凍結・解凍技術としての有効性が実験的に確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した (1) 高周波超音波振動を付与した組織体の凍結実験,(2) 高周波超音波振動を付与した組織体の解凍実験は予定どおり実施された.(1)の実験では,一方向冷却を実現するための二重管構造の試料容器,圧電素子,冷却液循環系,解凍液循環系,ビデオ観察系,温度測定系からなる装置を制作し,寒天ゲルを供試した凍結実験を行った.その結果,組織体全域を過冷却状態に移行させ,それを解除することでから急速凍結できることが確認された.また,全域を過冷却状態とする冷却条件および超音波出力が明らかとなった.次に,(2)の実験では,高周波超音波を照射しながら解凍することで,試料内部の解凍速度の向上を図り,それにより解凍過程で生ずる氷結晶の粗大化による損傷を軽減する方法について実験的に検討した.その結果,従来の気流解凍および流水解凍と比較して,試料内温度が5℃を超えないように維持しながら,試料全域を急速解凍できることが見出された.高品質な食品凍結技術を確立する上で,凍結損傷と解凍損傷の両方を抑制する必要があり,高周波超音波を利用することで急速凍結と急速解凍が実現できた点は本年度の成果であると考えている.次年度は,時間領域差分法(FDTD法)を用いた超音波照射下での試料の冷却過程の数値計算モデルの構築を進め,操作条件の最適化を進める予定である.以上のことから,本研究はおおむね予定どおりに進行していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,高周波超音波振動の付与に伴う発熱作用を利用した組織体の凍結・解凍制御の解析モデルの構築に重点をおいて研究を推進する.具体的には,凍結制御については,(1)時間領域差分法(FDTD法)を用いた超音波照射下での試料の冷却・昇温過程の数値計算モデルを構築し,実験結果と計算結果の比較検討を行い,モデルの妥当性を検証する.解凍制御については,(2)試料表面を品質維持で必要な5℃以下に維持しながら組織全域を急速解凍するために有効な超音波の照射方式(超音波照射出力を時間的に制御)について実験及び数値計算により検討する.また,交番磁場が組織体内の過冷却に及ぼす効果については,(3)最大100mTの交番磁場を付与するための実験装置を新規に製作し,組織体の冷却実験を行い,過冷却度と磁場強度および交番周波数との関係について基礎データの収集を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度経費のうち,220,444円の繰り越しが生じたのは,コロナウイルス感染症拡大のため,当初参加を予定していた学会の講演会が中止となり,旅費の執行がなかったためである.このため,220,444円を次年度に繰り越し,次年度に数値計算用のコンピュータを購入する計画である.これにより,凍結・解凍の挙動を解析に求めることができ,操作条件の最適化が可能になると考えられる.
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