本研究では、研究代表者のこれまでの知見を応用し、分子拡散特性に着目した混合気組成および乱流特性の最適化により、超希薄や高強度の乱流場まで適応できる包括的な着火制御法の構築を目的としている。これまでに、高強度の2つの異なる乱流特性場での着火制御法を確立するために、水素を添加した炭化水素混合気を主な対象と検討し、着火特性を提案するカーロビッツ数KaT4で整理できる可能性を明らかにしてきた。そこで、最終年では、さらにEGRガスを含む多様な分子拡散特性の影響を検討するために、主に希釈ガスの影響について検討した。 等方性乱流場を得ることが出来る乱流燃焼定容器では、層流燃焼速度SL0を25cm/sに揃えた水素-酸素-希釈ガス混合気を使用した。希釈ガスには,窒素に加えて分子拡散特性がほぼ同じアルゴン、および拡散特性が小さい二酸化炭素を用いた。当量比は0.5~1.4程度を主な対象とし、混合気静止場での着火および火炎半径が5mm以下の微小火炎の燃焼速度特性を把握、そして乱れ強度が2.8m/s程度までの範囲で、最小点火エネルギ-の計測および着火・火炎伝ぱの観測を実施した。その結果、同一SL0の混合気では、二酸化炭素を用いた混合気の方が乱流場での着火特性が窒素やアルゴンより改善すること、さらには超希薄ではそれが顕著になる傾向であることを明らかにした。加えて、提案する微小火炎の燃焼速度を基準とするカーロビッツ数KaT4により、乱流場での着火遷移領域が、希釈ガスの差異に因らず、概ね整理できることも明らかにした。 一方、スワール流場を発生できる扁平円筒状型定容燃焼器では、超希薄の当量比0.5で、酸素より拡散速度の大きなメタンおよび拡散速度が小さなプロパンを燃料とした空気混合気を対象とし、拡散速度に優れた水素の添加が、旋回流速度が60 m/sの超高速域までの着火および燃焼特性に与える影響について検討・評価した。
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