高温面のサブクール衝突噴流冷却では,よどみ点から拡がる液膜流で覆われた高温面上に単相強制対流,核沸騰,および遷移沸騰領域が共存し,冷却の進行と伴にその分布が変化する.安定なぬれ面の境界を定めるWetting Front(以下WFと記す)と呼ばれる核沸騰域外周位置は,伝熱様式分布ひいては冷却速度を支配するので,冷却温度履歴の予測や制御でWF挙動のモデル構築が重要である.しかし,WF近傍は液膜先端の前進と後退を繰り返す不安定なぬれを伴う遷移沸騰が支配するため,WF挙動のモデル化が困難であった.本研究では伝熱の時間スケールが大きく異なる遷移沸騰領域と準安定なぬれ領域の核沸騰・単相熱伝達領域の伝熱モデルを構築し,固体側の非定常熱伝導との連成熱伝達解析に基づくWF挙動予測手法の確立を目指す. 本年度は,固液接触非定常熱伝導計算でWF近傍の遷移沸騰伝熱を評価するモデルを作成し,単相熱伝達と核沸騰熱伝達の伝熱モデルと組み合わせたWF挙動の予測を行い,実験で得られたWFと表面温度の時間変化との比較・検証を行った.本研究期間全体での成果は,以下の3つに集約される. 1)一般的な時空間平均された沸騰曲線と固体側非定常熱伝導との連成伝熱モデルとは一線を画す遷移沸騰域での固液の非定常接触伝熱を考慮した非定常モデルが時刻のべき乗で変化するWF挙動が再現できることを確認. 2)安定なぬれ面上の非定常不均一表面温度・表面熱流束面上での局所単相対流・核沸騰熱伝達特性に対して,定常・等熱流束面に対する既存の相関式が適用できることを確認. 3)核沸騰域の最大熱流束は,沸騰長(沸騰開始点からWF位置までの距離)の概念を定常・等熱流束面に対する衝突噴流飽和沸騰系の限界熱流束の予測式に適用すると非常によく一致することを明らかにした.
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