研究課題/領域番号 |
20K04317
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
石田 秀士 摂南大学, 理工学部, 准教授 (80283737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 最適化 / 摂動論 / 常微分方程式系 / 大域的 / 非反復 / 漸近安定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は工学的によく扱われる2つの系,すなわち場に強制振動が加わっていない状態では(線形)安定定常状態 が実現するか,外部から適切な周期的振動を加えることによって(漸近)安定周期状態が実現しているような力学系に対して,さらに何らかの変動を加えた場合の解の振る舞いを摂動論に基づいて近似し,これを用いて大域非反復な各種の最適化手法を提案することである.検討項目は2つあり(1)の系に対応して形状最適化に基づく定常解の最適化と(2)漸近安定周期解周りの摂動論の有効性検証と最適化問題への適用,である.まず(1)では上面任意形状の2次元熱交換器の最適化を目指しており,そのためにまず計算を高速に行うために構築した1次元モデル化方程式の精度と計算時間の考察を行った結果,2次元数値計算結果と驚くほどよく一致する上に,計算時間が90~98%削減できる,との結果が得られた.これにより例えば千鳥配列熱交換器の配管部分を座標変換して直線化し,直線部にモデル化方程式を適用して,専ら流体部分の計算に計算資源を集中させるなどの応用が可能で,これは本研究の目的を超えて熱工学的に極めて有効である.次に(2)であるが,今年度は基準となる漸近安定周期解として安定定常状態の熱対流場に正弦温度振動を加えた場合を考え,これにさらに別の温度変動を加えた場合の解の時間的変動の数値計算を,(a)近似を用いない直接法と,(b)摂動展開して低次の打ち切った近似法,の2通りで行い,その結果を比較した.その結果,比較的振動振幅を大きくしても直接法と摂動法による数値計算結果はよく一致し,十分振幅が小さいところでより高次の近似が直接計算結果を再現すること,そもそも1次近似でも結果は良好であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
形状最適化計算の検討において構築した一次元モデルは,本研究の目的である最適化を超えて工学的に極めて重要であり,形状や境界条件を変えた方程式を構築することも容易で,応用範囲が極めて大きい.さらに形状最適化とは直接関係はないが蓋駆動キャビティー流れの下面熱流束と上面せん断力に対するプラントル数,レイノルズ数のスケーリング指数を予測する理論も構築できたことで,今後,蓋駆動流れの安定定常解周りの最適化問題への展開も視野に入ってきたことが理由である.
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今後の研究の推進方策 |
まず形状最適化については,今年度工学的に有用と確認された1次元モデルを用いて,形状最適化問題への取り組みを来年度以降開始する.まず基準となる形状を平板に据え,最適化に必要な感度に相当する量を求めることを目指す.さらに漸近安定周期解周りの摂動論の定量的有効性が確認できたので,この解を用いて来年度以降に最適化計算手法の開発を開始するが,まず近似解を構成するために必要な漸近安定周期解に帰属する諸量の高精度数値計算手法の開発から始める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初今年度必要と考えた物品費が不必要であったことが理由であるが,残額は来年度以降の研究の遂行,特に計算機環境の構築に必要であり,今後残金も含め研究補助金を適切に使用していく予定である.
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