研究課題/領域番号 |
20K04317
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
石田 秀士 摂南大学, 理工学部, 准教授 (80283737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 摂動論 / 最適化 / 漸近安定 / 線形安定 / フロケ理論 / 適合条件 |
研究実績の概要 |
漸近安定周期解周りの振動最適化と安定定常解周りの形状最適化の双方について研究を進めており,両者に著しい進展があった.まず前者については解析的表現を利用した最適化に不可欠な,フロケ理論に現れる定数行列Rの数値計算アルゴリズムの開発に成功した.一般にモノドロミー行列は数値的によく求められ,周期解の安定性解析に用いられている.上記のRは理論的にはこの行列から求めることができるが,計算精度が問題であった.そこで今年度独自のRの近似法を利用した繰り返し計算による数値解析手法を開発した.この手法では対象となる周期解が(線形)安定でも不安定でも適用することができ,かつ繰り返し計算の回数を大幅に削減することが可能である.さらに前者について,線形安定周期解周りの最適化も可能な理論の拡張にも成功した.後者については当初の予定通りではなかったが,理論において非常に大きな進展があった.本研究の主目的である摂動論を用いた最適化手法を用いた場合,従来法と同じく繰り返し計算による最適化を余儀なくされる場合があるが,そのような場合でも摂動論を微係数を求める手法とみなすことによって,Newton法と同じく2次収束する最適化アルゴリズムを構築することが可能であることを理論的に導いた.さらに1次元モデルを利用して随伴法から求まる感度と摂動論を利用した本研究の手法から求まる感度を詳細に比較したところ,離散化方程式系が適合条件と称する条件を満足しさえすれば,両者は完全に一致することが判明した.従って本手法は従来法である随伴法に基づく最適化を行なってきた研究者が,安心して取り扱えるものとなっている.なお,昨年度までに行なってきた最適化計算を効率化するための1次元モデルの構築については,国際会議で発表して査読付き論文として掲載され,また上述の適合条件について機械学会関西支部で発表を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定定常解周りの最適化については当初の予定通りではなかったが,理論的には極めて大きな進展があり,随伴法との比較で適合条件を導くことができた.さらに当初の予定にはなかった線形安定周期解の最適化に向けた理論拡張にも成功した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降まず漸近安定周期解周りの最適化手法の開発に関して,今年度開発した手法をより相空間が高次元の計算モデルに適用してその有効性を検討していく.安定定常解周りの形状最適化では今年度理論的・数値的に得られた知見をもとに,固体流体界面が任意形状の2次元熱交換器の界面形状最適化に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
形状最適化に関して当初の予定と異なり,理論的研究を先行して行う必要があったため,数値計算に関係する出費を差し控えた.来年度は,今年度開発した手法の適用性を検討するためのプログラムの開発と計算を行うための計算機を購入する予定である.
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