研究課題/領域番号 |
20K04318
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松木 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90634668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高温化学反応 / 衝撃波管 / 過渡吸収分光法 / マスター方程式 / 単分子反応論 |
研究実績の概要 |
高温環境における炭化水素分子の成長メカニズムを解明するために、分子成長に寄与する化学反応機構の研究を実施した。課題初年度である令和2年度は、小型高繰り返し衝撃波管装置を用いた芳香族化合物の熱分解および後続反応の実時間追跡を行った。具体的には、代表的な芳香族化合物であり、燃焼における粒子状物質の生成要因でもあるトルエンを対象とし、その熱分解反応により生成する反応中間体および生成物を過渡吸収分光により検出した。その結果、トルエンの熱分解速度、分解経路、分解生成物の後続反応に関する速度論的データが得られた。他の芳香族化合物であるエチルベンゼンやベンゼン誘導体の高温反応の測定も行い、化学反応モデルを用いた解析により、関連する反応メカニズムを明らかにした。さらに、より蒸気圧の低い芳香族化合物を対象とした実験を可能とするため、装置全体を加熱する機構の設計を行った。 また、実験研究と並行し、理論化学的手法による反応過程の解析・モデル化研究を行った。具体的には、圧力に依存する単分子反応の速度定数を計算により求めるためのマスター方程式法について、従来は多くの場合考慮されていなかった角運動量の保存とその衝突遷移を取り入れた2次元マスター方程式法を開発した。反応物と第三体との衝突過程をトラジェクトリ計算の結果をもとにモデル化することにより、エネルギーと角運動量を露に考慮した2次元マスター方程式を立て、それを数値的に解くことで速度定数を求めた。その結果として、特にトルエンの熱分解における角運動量の効果を定量的に評価することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芳香族化合物を対象とした過渡吸収分光実験は順調に進行し、反応経路に関する新たな知見も得られている。並行して行っている理論計算でも新規手法の開発とその検証を行い、高温反応を精度よく計算できることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
芳香族化合物を対象とした過渡吸収分光実験については、より定量的なデータを取得するための実験を行うとともに、より多くの化合物を対象とした実験を行うべく装置の改良も並行して進める。理論計算では令和2年度に開発した手法のさらなる検証をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により実験期間が限られたため、理論計算をやや優先的に進め、その結果として、装置の改良を後で行うことになった。次年度使用額は装置の改良に充てる予定である。
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