これまでの研究から、対向流熱交換器で分散JT効果を利用するためには、JT弁と組み合わせて使用していた従来型の対向流熱交換器よりも高温流側の流路インピーダンスを高め、圧力損失を数十倍大きくすべきことが分かった。そこで、これまでよりも高いインピーダンスを持つよう対向流熱交換器供試体(以下、供試体)を設計し試作した。供試体での圧力損失は、本研究で製作した圧力損失測定系を用い室温近傍(296 K)と液体窒素温度(77 K)で測定し、これまでよりも40倍程度まで圧力損失を大きくできたことが分かった。一方、圧力損失実測値を、論文等で提案されている幾つかの相関式で得た算出値と比較したところ、選択した相関式や流れの条件にも依るが数%から40%程度乖離することもあった。圧力損失の実測は、解析と現象の理解を進める上で重要であった。さらに、本研究で製作した対向流熱交換器試験装置を使用して、10 K程度の低温において供試体の特性試験を行った。この対向流熱交換器試験装置は機械式冷凍機で冷却を行う仕様で製作したので、液体ヘリウム寒剤を使用せずに低温での試験が可能である。またオイルフリーJT循環系とガス精製系を備え、低温下にある細管の詰まりなどの問題を生じずに試験を行えた。特性試験では、供試体単体で、従来の対向流熱交換器とJT弁の両方を合わせた機能を発揮した。例えばある測定条件では、10 Kで供試体高温端から流入したヘリウムが低温端に至るまでに、分散JT効果と通常の低温流側との熱交換により7 K程度に冷却される様子を観測した。一方、機械式冷凍機を含め既存の設備を活用して対向流熱交換器試験装置を製作したので、費用を抑えかつ迅速な試験実施が叶ったが、機械式冷凍機への冷却負荷が過剰になりヘリウムを液化するまでの冷却試験には至らなかった。相変化を伴う場合の分散JT効果の実験は、今後取り組みたい。
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