研究課題/領域番号 |
20K04320
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
党 超鋲 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30401227)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高熱流束冷却 / データセンター冷却 / マイクロチャネル / 流動沸騰 / 流動不安定 / 薄液膜蒸発 / 濡れ性 / レーザ共焦点変位計 |
研究実績の概要 |
高熱流束冷却には、マイクロチャネルを用いた流動沸騰が有効であるが、並列沸騰流路を用いる時、各流路の流量が不均一・不安定になりやすく制御することが困難であることが知られている。この問題を対処するため、放射拡張流路利用して流動安定化させる手法を提案し、高い流動安定性及び伝熱促進効果を確認した。 放射拡張流路は、中心部に液体が流入させ、半径方向に沿って流れる構造になっている。入口噴流(流量の均等分配及び逆流防止効果)と拡張流路(逆流防止効果)の相乗効果により、低い流量条件でも安定した液膜蒸発が維持され、高い伝熱性能が確認できた。入口二相状態の場合、入口での乾き度が高いほど高い熱伝達率が得られるため、複数の熱源(CPU,サーバー、ラックなど)が直列或いは並列に繋いで同時に冷却することが可能になった。また、重力の影響による流量分配の偏り及び伝熱性能の低下が無視できることを実験的に確認した。集光倍率1070倍の太陽電池冷却に適用する時、熱流束が82.4W/cm2条件での最大熱伝達率は235kW/m2Kであった。さらに、高熱流束、大面積の熱源を冷却するため,発泡金属を用いて冷却器の下流側に液体を供給する構造を提案し,下流側でのドライアウトを抑制することで,2倍以上の伝熱促進が実現した。 マイクロ流路内の二相流動の研究として、水力直径が1㎜の円管と矩形管内のスラグ流の形成条件およびスラグと壁面の間の薄液膜の特性をレーザ共焦点変位計で計測した。円管において、キャピラリー数が0.001以下の場合スラグと壁面の間に液膜が存在しない、気泡の移動抵抗が大きいことを明らかにした。矩形管において、キャピラリー数が0.01までは液膜の厚みが10μm程度一定になり、その後流速の増大に従って増加することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した放射拡張流路冷却器を、様々な入口状態(低流量、二相状態など)でその流動安定性と伝熱性能の維持が確認できた。また、伝熱性能が熱流束が大きいほど増加することが確認でき、マイクロ流路内の流動不安定によるCHFの低下が完全に抑制できたと考えられる。 また、矩形流路と円形流路における薄液膜の挙動の異同を明らかにした。円形流路において、濡れ性と管径にもよるが、1㎜管の場合おおよそCa=0.001が液膜形成するかどうかの境界になる。矩形流路は最初から液膜が観察されたが、Ca=0.01まではおおよそ液膜の厚みが変化しない、その後液膜が流速とともに厚くなる傾向を明らかした。
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今後の研究の推進方策 |
1.放射拡張流路内の流動沸騰のCHFを実験的に調べる。 2.多孔質体を用いて局所液体供給可能な立体的な冷却器の伝熱性能とCHFを調べる。 3.多孔質体の有無でCHFの予測モデルの構築 4.2つの冷却器の並列、直列につなぐ場合での冷却特性を調べる。 5.矩形流路における断熱および加熱(蒸発)条件での薄液膜挙動の実験的な研究と数値解析の実施。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度ほとんど出張できなかったため経費が余りました。2021年度テストセクション加工費用として使用する予定
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