本研究の目的は、薄液膜の気液界面の局所温度を走査型レーザ照射によって制御することによって、薄液膜に発生する温度差駆動の表面張力流を操作し、薄液膜内の対流と混合を能動制御する方法を構築することである。最終年度(令和4年度)の研究成果は次の通りである。 ①赤外線放射温度計による液膜表面温度の測定:長波長タイプの赤外線放射温度計を用いて、レーザスポット加熱で駆動される表面張力流の時々刻々の温度分布変化を測定した。対象は横60mm×縦60mm×厚さ3mmの5cStシリコーンオイル液膜であり、加熱開始から20s後までの時間変化を測定した。 ②熱電対プローブによる液膜内部温度の測定:素線径25umのK型熱電対を用いた温度測定プローブを製作し、液膜内部の温度変化を測定した。熱電対プローブの時定数や熱起電力ノイズのフィルタリングを検討し、10Hz以上の時間応答性を有することを確認した。 ③表面張力流パターンの数値解析:静止レーザスポット加熱で駆動される表面張力流の数値解析を行い、時間発達する対流の速度場と温度場の特性を調べた。赤外線放射温度計による表面温度の測定結果を妥当に再現できることを示した。加熱開始後0.1s程度から発生する表面張力流の第2ピークについて、その特性(速度の大きさや発生位置)を詳細に明らかにした。 以上の最終年度の研究成果を含む助成期間中の研究成果は、(1)炭酸ガスレーザのビーム走査による薄液膜の表面張力マニピュレーション技術を開発したこと、(2)それによって生じる表面張力流の定常/非定常特性(速度場と温度場)を測定したこと、(3)表面張力流パターンの数値解析手法を確立し、次元解析を併用して定常/非定常特性を詳細に明らかにしたこと、(4)測定と数値解析によるアプローチによって、薄液膜内の対流と混合を能動制御する方法論を検討したことである。
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