最終年度の研究実績は、(1)移厚鋼板の水冷却時の伝熱評価手法の確立と検証、(2)同手法のスプレー液滴列冷却への適用 の2点である。(1)の伝熱評価手法は,冷却への寄与が小さい冷媒を除去し、それにより伝熱面の復熱過程を赤外線サーマルカメラで測定する点に特徴がある。得られた復熱履歴を熱伝導解析することで、強冷却領域の熱流束分布を推定する。この手法を水平移動する厚鋼板上面に単一柱状水噴流を傾斜衝突させて冷却する基礎実験に適用した。その結果、本手法は冷媒の遷移沸騰および膜沸騰領域で適用可能であることが分かった。また、噴流衝突点近傍の熱伝達特性を過去の知見と比較することにより、評価手法の有効性も確認した。この研究成果は「鉄と鋼」に掲載された。 (2)の研究では、スプレー液滴列を移動厚鋼板に衝突させ、その後速やかに離脱させる実験を実施した。その結果、移動固体面上に形成される局所的な冷却領域の形状や温度降下量は、液滴列の方向ベクトルや固体移動速度の影響を受けることを見出した。そこで、冷却領域の形状を個々の液滴が描く接触領域の重ね合わせで表現する数値モデルを提案し、そのモデルが実験結果を良好に再現できることを実証した。さらに、その数値モデルと(1)で得られた結果を組み合わせることにより、スプレー液滴列衝突による温度降下量が予測可能であることを示した。 最終年度の研究成果は、前年度までの研究で開発した実験装置および観察手法の適用により得られたものである。これら一連の研究により、本研究の所期の目的はほぼ達成できた。
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