研究課題/領域番号 |
20K04327
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀 司 大阪大学, 工学研究科, 講師 (40744066)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火花放電 / プラズマ / 数値解析 / 火炎核成長 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
本研究では燃焼組成が火炎核の初期成長速度や最小着火エネルギ(MIE)に及ぼす影響を把握することを目的としている.昨年度までに定容容器を用い,静止した予混合気をレーザーにより着火させ,ハロゲンランプを用いたシュリーレン法により火炎の発達過程を撮影し,火炎核径の時系列変化を計測する手法を構築した.本年度は層流燃焼速度を計測し,他の文献と比較して計測精度を検証した.更に,容器を加熱することで,液体燃料を気化させて,火炎核成長を計測する手法を構築した. 三次元数値解析手法に関しては,プラズマを考慮した数値解析手法を構築した.ブレークダウンまでを考慮すると,計算時間が膨大となるため,熱プラズマを考慮した.まず,平衡計算により熱プラズマの組成を計算する手法を開発した.次に,熱伝導率,電気伝導率,粘性係数,拡散係数などの物性値をプラズマ組成を考慮して,最大2万Kまで計算するコードを作成した.さらに,圧縮性を考慮した連続の式,運動量保存式,エネルギー保存式,化学種保存式に加えて,電場式を考慮した計算コードを開発し,火花放電から火炎核の形成,火炎伝播までを扱える計算手法を確立した. 計算精度を検討するため,横風を受ける条件での火花放電を計算し,火花放電の伸長や再放電の現象を幅広い速度と圧力範囲で再現することに成功した.さらに,容器内での点火実験を対象に燃焼計算を実施した.層流燃焼速度に関しては実験値を概ね再現できたが,MIEは希薄領域で実験を過大評価する傾向となった.これは,計算時間短縮のために,拡散係数の計算を簡素化したためと考えており,多成分拡散を考慮することにより改善されると考えている. 次年度は様々な燃料で火炎核成長を計測するとともに,その条件においてプラズマを考慮した燃焼解析を実施し,燃焼組成が火炎核の初期成長速度や最小着火エネルギ(MIE)に及ぼす影響を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では定容容器を用いて火炎核成長を計測する手法を構築している.混合気作成における精度を検証する手法,乱流場形成用のファンの導入,容器の加熱機構の構築に時間を要したが,基準燃料を用いて層流燃焼速度を計測した結果,他の文献と定量的に問題ない結果を得た.メタン,水素,アンモニアなどについて火炎核成長に関する計測を実施でき,概ね計画通りに進んでいる. 火炎核成長速度およびMIEのモデリングに関しては,モデリングの重要なデータとなる,三次元数値解析について大きな進展があった.申請者らが構築した素反応を考慮した燃焼解析手法にプラズマを考慮した解析を導入することに成功した.これにより,放電から火炎核成長,火炎伝播までを計算する手法を確立することができた.計算コストに関しても,現象を適切にモデル化することにより,実用的な計算時間で熱プラズマを考慮する見通しを得た.実験と計算結果を得られる見通しが得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は燃料種を変更するとともに,異なる燃料の混合組成を用いて,火炎核成長に関する計測を実施する.実機では乱流場におけるデータが必要とされている.そこで,層流場に加えて,対向させたファンを用いて乱流場を形成し,乱流中での火炎核成長についても調べる.乱流場はPIVを用いて,乱流強度を定量的に把握しながらすすめる.一方,容器を加熱した場合,熱膨張によってファンの回転が阻害されることを確認しているため,乱流場での計測については気体燃料を中心にすすめる. モデリングをすすめるために,同条件に対してプラズマを考慮した燃焼解析手法を適用して解析を実施する.乱流場においては,乱流モデルの活用を前提に,LESやRANSでの支配方程式を構築し,MIEの予測などについて検討をすすめる. 最後に,実験と計算から,幅広い当量比,乱流場,燃料種でMIEや火炎核成長速度を予測するモデルを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
数値解析が大きく進捗したため,実験よりも計算に集中したことや,コロナの影響で学会への参加が少なくなったことで次年度使用額が生じた.これについては,次年度にPIV計測に関する費用や大型計算機の使用量などに利用して,研究を加速させる予定としている.
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