本研究では不均一な温度分布を有する木質系バイオマスを対象とする.放射光X線を利用してリアルタイムで非破壊可視化計測することにより内部構造の変化,密度分布の変化を定量化し,木質系バイオマスの熱分解および燃焼メカニズムの詳細な解明を目的とする.入熱速度は熱分解現象の重要な影響因子となりうることが予想され,固体内部の構造や温度分布の変化,さらに固体近傍の境界層の形成に影響を及ぼすものと考えられる. コロナ禍にありつつもSPring-8・BL20B2ビームラインでの計測を実施できた.令和3年度までに,高熱流束を実現できるランプヒーターからの光熱直接照射により熱分解していく木質系バイオマス試料の内部可視化システムを構築した.試料は直径5mm,高さ5mmの円柱型のヒノキ,ラミンおよびペレットを使用した.窒素雰囲気とすることにより気相での有炎燃焼は起こらない.繊維が方向性を持つ試料と繊維が破断したペレットでは熱分解の様子が異なることを示した. 令和4年度では,熱分解時の木材試料に微粒子を混入させた試料を試作し,現地での内部可視化計測から試料の変形挙動を3次元的に追跡した.熱分解前後で試料の密度が大きく変わることから屈折コントラスト法を適用した計測を試みた.ラボでは,熱分解過程にある木質バイオマス試料からの熱分解ガスの挙動および熱的密度変化計測のための予備的実験を引き続き行った. データ数が膨大なため現在も解析中である.また,可燃性固体への入熱速度に関して高温雰囲気下での実験のための炉の準備を進めている.ラボでは,熱分解過程にある木質バイオマス試料からの熱分解ガスの挙動および熱的密度変化の計測を実施しているが,窒素雰囲気での計測に課題が残り今後も検討していく. 最終年度は,学術雑誌論文(査読有)1報掲載,国際会議発表(査読有,発表は2023年度)1報Acceptの成果公表を行った.
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