研究課題/領域番号 |
20K04332
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
宮本 泰行 富山県立大学, 工学部, 准教授 (80348820)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱物性計測 / 状態方程式 / 水素キャリア / プロセスシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の柱である、測定、モデル化、およびプロセスシミュレーションのそれぞれにおいて、大きな進展が得られ、本課題の目標である、水素キャリアプロセスおよび関連物質の最適な選定の達成に近づいた1年であった。 熱力学諸性質の精密測定においては、これまでの最大の課題であった、高温測定(~600 K)用の恒温槽の温調の迅速化を、達成した。具体的には、複数のヒーターをプログラムブルなPID制御装置で同時制御することが可能となった。現在は各種の校正実験を実施中であり、完了し次第、ターゲット物質を用いた測定に、移行する計画である。 モデル化においては、すでにHelmholtz関数型状態方程式の開発を開始しているメチルシクロヘキサンやトルエン等に加えて、新たにビシクロヘキシル、ビフェニール、ナフタレン、およびギ酸に関する式の開発に、着手することができた。具体的には、それぞれの物質に関する熱力学諸性質の入力値セットを作成し、これと状態方程式の各係数の初期値とを合わせた相関環境を整備し、入力値への相関を、全ての物質について開始できた。以上の結果、6つの異なる水素キャリアプロセスに係る、計8物質の状態方程式の開発が、著者らにより開始できた。なお、成果は順次国際誌に、論文投稿する計画である。 一方で、プロセスシミュレーションに関しては、プロセスシミュレータASPEN PLUS ver. 10.0を用いて、新たにビシクロヘキシルおよびギ酸を水素から生成するプロセスのフローシートを作成した。これらのプロセスには簡易型の熱力学性質推算モデルを活用しており、ビシクロヘキシルについては修正Peng-Robinson状態方程式を、ギ酸についてはNRTLモデルおよびHayden-O’Connellモデルを、活用している。また、これらの成果の学会発表に向け、現在調整および講演準備を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
600 Kまでの高温域における高精度かつ迅速な測定が、本研究費の支援を得て可能となった。サンプルの調合プロセスや圧力制御・調整機器の改良も同時に進める事ができ、高精度なHelmholtz関数型状態方程式の開発に不可欠な、新たな熱力学諸性質実測値の精密測定が、短期間で達成できる環境となった。 一方、熱力学モデルの開発では、6種類のプロセスに係る計8物質について、Helmholtz関数型状態方程式の開発を実施中である。これにより、熱力学諸性質に関する国際標準値の整備に加えて、最先端のモデル開発手法の発展への貢献も、期待できる状況となっている。 さらにプロセスシミュレーションでも、新たに複数のプロセスのフローシートが作成できた。現在は、各種の性能指標(Key Performance Indicator, 以下KPIと略記)をターゲットとした感度解析を行っており、今年中の学会発表に向け、調整および講演準備を進めている。 以上のように、予定している研究全てについて、計画以上に進展していることから、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
測定については、新たに整備した温調機器を活用して、校正実験が終了し次第、順次本測定に移る計画である。物質としては、はじめにこれまでの実測値との整合性を確認するための、トルエンおよびシスデカリンに関する測定を行った後、トランスデカリン、ビシクロヘキシル、およびギ酸について、順次精密測定を実施していく予定である。 モデル化については、主としてメチルシクロヘキサンに注力し、高精度かつ先進的なHelmholtz関数型状態方程式を一刻も早く完成させ、国際誌への論文投稿を実施したいと考えている。その後、他の物質についても、この完成式を初期値として、それぞれの物質について整備済みの入力値セットに順次回帰し、信頼性の高い状態方程式を開発していきたいと、考えている。 プロセスシミュレーションについては、学会発表に向けて、各フローシートの調整と、KPIを用いた感度解析を着実に進める計画である。 以上のように、各方面での研究を迅速かつ着実に進め、本課題の最終目的である、水素キャリアプロセスおよび関連物質の最適選定の提案の達成を、目指す計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
温調機器等に消耗品の交換が発生する可能性があり、3月下旬まで予算を残したが、年度内の交換は不要となった。そのため、次年度にこの部分の消耗品等に、使用する予定である。
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