研究課題/領域番号 |
20K04334
|
研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
井原 禎貴 大同大学, 工学部, 教授 (30377684)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 排ガス後処理 / 酸化チタン / エンジン |
研究実績の概要 |
本研究では,希少金属の代わりに安価な酸化チタン系材料の熱励起ラジカル生成機能を用いてエンジン排気ガス中の有害成分を酸化・分解する技術の創成を目指し,未だ明らかになっていない熱励起触媒能の発現メカニズムの解明と実用化に向けた活性温度・素材・形状の最適化条件を検討する. 本年度は,前年度とは異なる混合型酸化チタン素材を対象として,COおよびアセトアルデヒドの酸化分解特性を明らかにする実験を行った.対象成分を乾燥空気と混合して分解対象ガスとしたものを,小型電熱炉内に設けた流路中に充填し加熱された混合型酸化チタンを用いて酸化分解実験を実施し,分解性能に及ぼす加熱温度の影響を明らかにした. また,同一環境下で紫外光照射による酸化チタンの光触媒能を用いた酸化分解性能との比較について,前年度の光熱同時励起の効果を混合型酸化チタンを用いて実施した.その結果,COガスを対象とした場合は光熱同時励起と熱励起でCO酸化率に差が生じないこと,アルデヒドガスを対象とした場合,低温領域での光励起によるCO2生成率の向上が高温領域で確認できなくなることなどを明らかにした.これらの特性は,先行研究で使用した複合型酸化チタンやアナターゼ型酸化チタンと大きく相違がない.一方でこれらの酸化チタンは,光触媒として使用した場合にはその触媒能に大きく差が現れることが一般に知られており,熱励起触媒能の発現メカニズムが光誘起の場合と異なることの証左と言える. さらに,実際のディーゼルエンジン排ガスを対象にした実験を前年度に引き続き実施し,新たな混合型酸化チタンについても十分な排気浄化の効果があることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合型酸化チタン素材を対象として,COおよびアセトアルデヒドの酸化分解特性を明らかにする実験に成功した.さらに,混合型酸化チタンについても本研究での熱誘起触媒としての性能と,従来の光触媒としての性能を比較することができ,概ね順調に進捗しているといえる.エンジン排ガスを対象にした実験では,前年度の先行実験の経験からガス採取と濃度測定に時間がかかっていたため,採取方法などを工夫して効率化を図った.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で,この技術の目標の一つである「処理効率」に直結するガス流量の影響について,初期に解明した結果と異なる可能性があることがわかってきた.その影響はガス種,濃度や水分量で異なると考えられ,それらの影響について明らかにする実験に取り掛かる予定である. 実際のエンジン排ガスを対象にした実験では,ガスの採取と無機化率の測定の効率化を工夫したが,劇的な改善とはならなかったため,引き続き実験を実施して条件範囲を広げる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で初年度の測定機器納入が大幅に遅れ,その影響で配管やガスボンベなどの消耗品購入がなかった.本年度はそれらの消耗品を購入できたが,本来本年度予算に計上したサンプルガス等の購入が不要になったため,それらの分が次年度使用額として生じた. また,研究協力者が疾病により本研究への協力が困難になったため,謝金の支出がなかった.
|