自動車用ガソリンエンジンの低燃費化には,圧縮比を高めることが有効であることが古くから知られているが,ノッキングに代表される異常燃焼が生じてしまうため圧縮比の増加には限界がある.ノッキングを避けながら圧縮比を高めるために,ノッキング現象を詳細に調べる必要がある.ノッキングは小空間で生じる爆発的な高速燃焼であり,同現象を精密に捉えるためには高い時間解像度で火炎面を捉えることができる計測が必要となる.一般には光学可視化や圧力計測などが用いられることが多いが,計測の時間的・空間的解像度の制限によりノッキングを精密に捉えるには至らない.本研究グループが開発しているマルチイオンプローブ法(複数のイオンプローブを用いて火炎面を空間的に捉える計測手法)は定容燃焼管内で発生させた様々な種類の火炎を,高い時間解像度で詳細に捉えられることが明らかになっており,同計測法がガソリンエンジン内のノッキング現象を捉えるための十分な時間解像度を有することを確認している. 本研究は,マルチイオンプローブ法をガソリンエンジンに適用し,同計測法でノッキング現象の発生初期から発達過程を詳細に捉えることを最終目標としている.これを実現するために,定容燃焼管を用いたイオンプローブの計測特性の調査を継続的に実施するとともに,ガソリンエンジンへのマルチイオンプローブ計測システムの設置を容易にすることができる,ユニット型マルチイオンプローブの開発を本研究期間内での目標としている.矩形管を伝播する火炎のイオンプローブと可視化による同時計測,およびガソリンエンジンへのイオンプローブ設置数の多点化が成功し,ユニット型マルチイオンプローブ完成への目途がついた. 研究期間内でマルチイオンプローブ計測技術はある程度成熟したと判断できたため,最終年度は同計測技術をガスタービン燃焼器へも広げるべく研究を遂行した.
|