研究課題/領域番号 |
20K04341
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
足立 和成 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (00212514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 圧電素子 / 跳躍・降下現象 / 電界集中 / 分極反転 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響などにより、研究自体の進展状況は当初の研究実施計画とは大きく異なってしまっている。しかしながら、圧電セラミック円板単体における「跳躍・降下現象」の探究においては、一定の進展が見られた。特にそれが振動子の機械共振周波数付近で生じる電界の著しい乱れに起因する電界集中によるものとする仮説を支持する新たな結果が、数値シミュレーション並びに実験で得られたことは、一定の成果である。具体的には、①直径40mmの異なる厚み(3mmと6mm)の圧電セラミック(PZT)円板において、その上下面に形成した蒸着銀電極間の印加電圧が僅か1V(0-P)程度の時でも、厚み横振動モードの機械共振周波数付近で「跳躍・降下現象」が観察され、その程度は円板の厚み(電極間隔)が小さいほど著しいことを実験的に見出した上、②圧電性を考慮した有限要素振動解析において、いずれの円板についても機械共振周波数付近での電界の乱れが生じていることを確認するとともに、電界強度が圧電セラミックの分極反転閾値を超えた領域でそこの分極方向を反転させて行った振動解析によって、「跳躍・降下現象」を定性的に再現させることに成功したことである。ただ「跳躍・降下現象」自体は、再現性の低い現象であり、従って、同一形状・同一圧電材料の円板でも、その内部の結晶ドメインの態様は一般的に異なることなどを考慮し、多数の圧電セラミックス円板について同様な実験的検討結果をさらに積み重ねることが、現象の機構の明確な把握にはまだ必要であるというのが、現状での本研究の到達点である。また、学会等での発表も行えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、人的な交流が困難になったことの影響や、感染拡大防止のための研究室内の環境整備(アクリル板の設置など)に手間がかかったこと、リモート講義の準備・実行に忙殺されたことが研究の遅れの主たる要因になっている。さらにそれだけではなく、研究用の資材調達にまで支障をきたしてしまったことの影響が大きかった。例えば、本研究に必要なボルト締めランジュバン型振動子(BLT)が国内での不織布マスク生産に用いられる超音波プラスチック接合装置に広範に使用されていることから、同装置の増産のために供給不足に陥り、その調達が一時期著しく困難になったため、次年度以降の研究継続を安定的なものにするために、研究代表者がまずその確保に努力しなければならない状況に追い込まれるなど、研究計画策定時には到底予測不可能な事態が相次いだ。加えて、研究代表者の研究室がある建物の増改築工事における杜撰な計画に起因する問題が重なったことも事態をより困難にした。
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今後の研究の推進方策 |
研究室のある建物の増改築工事やコロナ禍への対応などについては、既に完了していることから、今年度以降は初年度のような事態には陥らないと考えている。ただ、研究の進展に遅れが出ていることは確かなので、残りの3年間を使ってこれを少しづつ取り戻すことで、当初の計画に沿った成果が得られるようになると考えている。
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