研究課題/領域番号 |
20K04343
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
渡邉 鉄也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70240504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フライキャスティング / キャスティング搬送 / 3リンクマニピュレータ |
研究実績の概要 |
本研究では,宇宙空間などにおいて,軽量構造物を空間的に距離のある位置に配置するために,柔軟な紐の重さを利用して搬送するキャスティング搬送装置の開発を最終目標とし,キャスティングの原理が類似しているフライキャスティングに注目し,どのようなパラメータが飛距離に影響するのかを解明するとともに,搬送装置を試作する. 近年,宇宙開発が注目されている中,搬送装置が重要視されることが考えられる.フライフィッシングとはフライラインの先端に取り付けられた疑似餌となるフライを目標の位置に配置する動作である.フライは軽量であることから,フライの重さを利用して飛ばすことができないため,ラインの重さを利用して飛ばすという,他の釣りにおけるキャスティングとは異なる方法を採用している.本研究では,腕とロッドとフライラインから成る系の総合的な動的挙動を解明し,解析モデルを構築する.そして,キャスティング実験結果との比較により解析モデルの妥当性を検証するとともに,飛距離やコントロール性を向上するパラメータを解明し,キャスティング搬送装置に応用する. 令和2年度は人間の上腕,前腕,手首の挙動を模擬可能な3リンクのキャスティング搬送装置を試作し,キャスティング搬送が可能か調査した.また,人間がキャストする場合,腕の角速度は熟練者でも10%程度の誤差がある.そこで,設計指針を構築するために,人間の誤差が含まれない状態で,実験結果と解析結果を比較して解析モデルの妥当性を今検証していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で,(1)マルチボディーダイナミクスを用いたモデル化,(2)リバウンド現象の解明,(3)ダブルホールキャストの検討,(4)フォルスキャストの検討,(5)ロールキャストの検討,(6)リーダ,ティペット,フライの影響について検討をしてきた. 令和2年度は「サイドキャストの検討」を行う予定であった.サイドキャストは上方に立木などが存在し,オーバーヘッドキャストが出来ない場合に用いられる.これまで行ってきた数値シミュレーションでは,オーバーヘッドキャストにおける鉛直平面内でのモデル化をしており,2次元での解析を実施してきた.しかし,サイドキャストは水平平面内でのモデルとなるため,平面直角方向の重力が作用することから,3次元での挙動解析が必要となり,モデル化が複雑になる.サイドキャスティングは実フィールドにおいては必要なテクニックであるが,3次元挙動で複雑なモデリングが必要なため,国内外でも全く検討がなされていなかった.そこで,本研究では,ラインが飛行中に水面に落下しないような最適なキャスティング方法,あるいは,ロッドやラインの剛性,重量を明らかにしていく予定であった. 研究期間内には,令和2年度,令和3年度に(7)サイドキャストの検討および(8)ラインの伸びを考慮した解析を実施し,令和4年度には(9)キャスティング搬送装置の試作をする予定であったが,予定を変更し,令和2年度にキャスティング搬送装置の試作を行った.これは,製作に時間を要するためであり,装置の製作を先に行った.
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今後の研究の推進方策 |
マルチボディーダイナミクスを用いた解析では,入力データとして腕あるいはロッドのグリップ部の角度,角速度,角加速度の時刻歴波形が必要となる.これまで用いていた角速度計は,最大600deg/sの角速度までしか測定できなかったため,水面に落下しないことを考慮したサイドキャスティングなどのように角速度が速いキャスティングにおいては測定が不可能であった.そこで,令和3年度は4000deg/sの角速度計を用いることにする.これにより,ラインの挙動は動画撮影装置を用いて観測し,ロッド,腕の挙動は角速度計を用いて把握していく.その後,数値シミュレーションで,飛距離が長くなるキャスティング方法や,目標位置にフライを着水させる方法を明らかにする. また,令和2年度に製作した3リンクの「キャスティング搬送装置」の実験結果と3リンクのシミュレーションの結果を比較し,シミュレーションモデルの妥当性を検証するとともに,キャスティング搬送が可能か調査する.将来的には「キャスティング搬送装置の最適設計手法の提案」も行う予定である. また,令和3年度には,当初予定していた,サイドキャスティングのシミュレーションモデルの構築も着手し,実験結果と解析結果の比較や飛距離を伸ばす方法を明らかにしていき,上部に立木などの障害物があった場合の回避方法なども検討していく.サイドキャスティングの撮影は,上部からになるため,ドローンなどの撮影装置が必要となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度にキャスティング搬送装置を製作する予定でしたが,予算が足らないと判断し令和2年度に製作することにしました.製作してみると,予算内で安価にすることができました.また,計測で用いるFFTアナライザが破損し,修理に出しましたが,こちらも安価にできました.従いまして,令和2年度の未使用額は次年度にし,高速度カメラとドローンを購入する予定です.
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