研究課題/領域番号 |
20K04345
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
木村 仁 玉川大学, 工学部, 准教授 (60376944)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 水力学的骨格 / 能動変形寝具 / 寝心地 / 寝返り |
研究実績の概要 |
今年度は水力学的骨格を利用した寝返りのしやすい能動変形寝具について研究を行った。提案機構は内圧を加減圧可能な袋状構造を複数利用して構成されるものである。我々は過去に棒状の袋状構造を体軸方向に対して横に3本で構成される層と、縦に5本で構成される層を重ねた2層構造の能動変形枕を試作したが、提案機構はこの枕の横幅をかなり広く取り、寝返りした際にも良い寝心地を維持できる様な変形機能の実現を目指すものである。 この寝心地の良い変形状態を調査するため、今年度は変形機能のない通常の詰め物を利用した幅広の枕を用い、10名の被験者で寝返り前と寝返り後の寝心地を比較する実験を行った。 また、各被験者にはこの枕を利用して1時間ほどの仰臥位姿勢を維持してもらい、実験前と実験後で圧痛点の硬度を測定し、比較する調査も行った。 我々の過去の研究では首と後頭部の形状から、仰臥位における適切な枕形状の経験式を導出したが、横寝姿勢についてはまだ研究されていない。今年度は横寝における適切な枕の開発を目的として、寝返りに必要な力を測定した。今回は被験者にベスト形状の装具を着用してもらい、横から引っ張って寝返りに必要な力を測定した。現時点では体格や体重と寝返り力との間に有意な相関は見られていない。この点については今後更に詳しく調査する予定である。 これまでの能動変形枕およびマットレスは、30cm四方程度のサイズの電子回路基板を用いていたが、今年度はコンプレッサやコントローラも含めて、全てのシステムが携帯可能な能動変形寝具システムの開発に着手した。これはマイコンやマイクロコンプレッサを利用し、ソレノイドバルブの駆動電圧を全て5Vのものを利用することで小型化を図ったものである。 このような携帯型システムが実現できれば、個体別に適切な形状の枕のフィッティングなどを行えるため、実用面での利益は大きいと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は横寝に関する寝返り力の測定や枕利用前後の圧痛点の変化などの測定を行うことができたが、当初予定していた能動変形枕などについては思うような進展は得られなかった。 これはコロナ禍による研究代表者および本研究テーマの担当学生の研究参加日数が大幅に減少したことが主たる理由である。本研究は実際に大学に来て枕を利用して仰臥位を維持する実験が必要だが、登校制限などにより学生の人数も確保できず、実験を行える日数が通常の年度に比べて極端に少なかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も水力学的骨格を利用した能動変形寝具の開発を引き続き継続していく予定である。また、この能動寝具だけでなく、人体に優しい柔軟なパワーアシスト機構の開発も予定している。具体的には肘関節のパワーアシストを予定している。これは肘関節が1自由度であり、他の関節に比べて比較的容易に実現できると考えられるからである。この機構は直線形状で屈曲伸展する柔軟な袋状構造をふたつ利用し、片方は肘関節の伸展、片方は屈曲に用いる拮抗筋を模擬したシステムである。この機構の構造部品は布製のサポーター状のものであり、アクチュエータは内圧を加減する袋状構造であるため、人体に接触する全ての部品が柔軟であるという特徴がある。このような機構は外骨格型のパワーアアシスト装置と比較してはるかに事故が発生しにくい特徴があると考えられるため、実用的な利用が期待できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は物品費が主たる用途であったが、購入先業者の割引のため当初予定額の消費金額より安価になったため残額が生じた。 来年度は研究に関連する部品費でこの残額を利用する予定である。
|