今年度も水力学的骨格を利用した柔軟な能動変形寝具について研究を行った。提案機構は内圧を加減圧可能な袋状構造を複数利用して構成されるものである。 我々は過去に棒状の袋状構造を体軸方向に対して横に3本で構成される層と、縦に5本で構成される層を重ねた2層構造の能動変形枕を試作した。昨年度はこの能動変形枕を移動して利用することが容易になる様に、旅行用のスーツケース内に枕本体、電源、コンプレッサ、制御弁、コントローラの全てを搭載したパッケージの開発を行った。今年度はこの能動変形枕パッケージのシステムソフトウェアの改良を行い、センサを利用して加圧が不要な際はコンプレッサのスイッチを自動的にOFFにするなどの省電力設定を実装した。 また、提案装置は各袋状構造内部の圧力をリアルタイムでモニタリングできるため、各袋状構造の内圧の分布を適切に設定することで頭部の形状を詳細に設定しなくてもある程度自動で適切な形状の枕に変形するシステムの実現が期待できる。 また、天井や果実採取などの作業を補助するための水力学的骨格を利用した安全な上半身のパワーアシストスーツの開発も並行して行ってきた。こちらの機構は昨年度は肩関節の挙上時に袋状構造の発生トルクが不足する問題があったが、今年度は袋状構造を太くすることでその問題を解決した。また、音声認識操作方式を導入することで作業姿勢で手が挙上されていてもそのまま操作することが可能になった。このスーツは袋状構造から流体の漏れが無ければ原理的に姿勢維持にエネルギーが必要無いため、モバイルバッテリー程度の電源で長時間の自立駆動が可能である。着用部分の総重量は昨年とほぼ同じ約3kgで大変軽量に構成されている。本機構についても今後実用化に向けて改良を行う予定である。
|