攪拌翼を用いずに容器の歳差回転運動のみで混合する遊星式攪拌では、歳差率を変えた場合に容器内に生じる旋回流強度と混合性能が必ずしも対応しない場合がある。そこで、容器内に生じる歳差回転流れの慣性振動に着目し、混合性能との関係を明らかにすることを目的として、容器内流れ場と流体混合の数値解析および実験による検証を行った。数値解析では、遊星式攪拌の自転・公転回転速度比(歳差率)、容器の角度、液面高さをパラメータとして、遠心力およびコリオリ力を考慮した二相流解析により攪拌容器内の流れ場を再現した。得られた流れ場を元に、容器内に配置した多数の粒子追跡により混合性能を評価した。解析結果によると容器角度の混合性能への影響が大きく、角度が小さい条件で比較的に高い歳差率で混合が促進することが分かった。また、数値解析で得られた流れ場の慣性振動の特徴抽出を行うため、Dynamic mode decomposition(DMD、動的モード分解)およびProper orthogonal decomposition(POD、固有直行分解)を行った。両モード解析により、混合性能が高い条件では、液面近傍に組織的なPODモードが現れること、また、DMDモードの時間係数の減衰が小さいことが明らかとなった。混合性能に関する実験的な検証では、遊星式攪拌の自転と公転の回転速度比を2.1:1とし、容器角度は15、30、45度の条件とした。混合性能の評価には、シリコーンオイルとでんぷん粒子を用いたミー散乱法による可視化計測を用いた。その結果、容器角度が小さい場合に混合が完了するまでの時間が短く混合性能が高くなり、数値解析結果の妥当性が示された。
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