本研究の目的は、圧電アクチュエータの位置及び力センサレス制御の実現である。 2022年度は、2020、2021年度に確立した高周波印加信号を用いた位置推定システムに対して、位置と力の同時推定手法への拡張を試みた。2021年度に構築した様々な負荷条件の下での実時間インピーダンス計測を行い、得られた静電容量と抵抗値を基にした多項式関数を用いることで発生力と位置を同時に推定できる可能性を示した。現段階では、その計測精度とモデル化手法について、十分な検討ができていないため、今後は本手法の精度向上と、実制御システムへの適用を進める予定である。 上記の他、弾性ヒンジ機構と積層型圧電アクチュエータを利用したマイクログリッパシステムを設計し、適切な位置にひずみゲージを設置することで、位置と力の同時計測が可能であることを示した。そして、その検出信号を基にした切り替え制御器を設計して、微小物体の把持制御が可能となることを実験により検証した。 研究期間全体を通じて、当初の目的であった圧電アクチュエータの位置と力の推定技術に関して、高周波印加信号に基づく手法と数学モデルに基づく手法を確立し、実験的にその有効性を確認できており、当初の目標を達成することができた。さらに、その研究過程において、ひずみゲージを用いた位置と力の推定手法、振動抑制のための圧電アクチュエータの設置位置と制御パラメータの同時最適化アルゴリズム、ブリッジ回路を併用した圧電アクチュエータの状態推定手法の改善など、圧電アクチュエータの状態推定と制御に関する多くの成果を得た。
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