適応制御法は制御器パラメータの調整機構を有し、例えば産業機械の制御性能向上を目的とした応用が期待されている。世界中の工場で昼夜を問わず利用される産業機械においては,環境・省資源問題のために省エネルギー化も重要な課題である。本研究では,適応制御法による省エネルギー効果について解明することを第一の目的としている。さらに,省エネルギー効果を向上できる適応制御系の構成法の提案も目的とする。2020年度は,1パラメータのみを調整する適応制御系を対象に省エネルギー効果について基礎的な理論検討を行い,知見を得た。2021年度は複数パラメータを調整する方法を検討した。動作時の加々速度を抑制することにより省エネルギー化が実現できると考え,これを考慮した動作軌道生成法を提案後,実験により有効性を確認した。さらに,単純適応制御系の設計法を提案後,前年度の提案法との比較実験において目標動作への追従誤差を約10%低減できた。 2022年度は,2020年度に提案した方法を産業機械の領域被覆計画に応用する手法を提案後,実験により既存の加々速度制限を考慮した方法に比べ,動作時間を約14%抑えつつ,エネルギー消費を約4%低減できることを確認した。追従誤差についても,約15%低減できた。さらに単純適応制御系について高次の拡張誤差信号を用いる方法に展開後,実験検証を行い,前年度の方法と同程度の位置追従性能において比較した結果,消費エネルギーを約8%低減できた。 2023年度は外乱の影響を考慮し,既存のロバスト制御法との結合について検討した。安定性の理論的な証明と実験検証を行い,前年度までに提案してきた方法に対して約55%位置追従性能を向上できた。しかしながら,消費エネルギーは約13.5%上昇し,両者のトレードオフを裏付ける結果となった。 以上の成果の一部について,国際ジャーナル論文と国際会議論文において公表した。
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