当初計画では、2020年度に準備を整え、2021年度には脊椎用6軸力学試験機をコンケン大学へ移設し、ヒト屍体による実験を実施する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、国内実験および海外渡航が制限され、2022年7月に試験機の移設、その後にタイへ渡航しての実験となった。 2022年7-8月、6軸力学試験機のコンケン大学での設置に合わせて、研究分担者の馬場、研究協力者の稲葉にサポート学生を加えコンケン大学へ渡航し、現地の笠井らと6軸力学試験機の立ち上げ及び動物屍体腰椎で確立した試験方法を基に、ヒト屍体腰椎を用いた実験を行った。主な実験内容は、次の4点である。1.正常、損傷、金属内固定具装着など各種モデルに対する前後屈、左右側屈などの曲げ、および左右回旋試験の実施、2.各椎間板に圧力センサを挿入し、各種モデル間の椎間板内圧の変化の調査、3.ひずみゲージにより、損傷モデルに装着した金属内固定具(ロッド)のひずみの変化の調査、4.各椎体にマーカーを付け、カメラ撮影および画像解析により、試験中の各椎間の挙動の調査 これらの実験は、腰椎FSUおよび多椎間について行った。その結果、アジア人種屍体腰椎に対しての各椎間の変形挙動(回転角度)、椎間板内圧および金属内固定具(ロッド)のひずみの変化のデータを取得し得る実験環境、方法を構築することができた。今回は限られたヒト屍体試験体数での実験実施となり、系統的な実験を行うには至らなかったが、コンケン大学において6軸力学試験機での実験環境、実験方法が整えられたことは大きな成果となった。今後の発展が期待できる。 また、動物屍体脊椎の実験結果を基にした脊椎およびインプラントの変形挙動、内部応力分布の数値解析の構築については、粘弾性を考慮した独自のモデルの基礎を構築できた。今後はコンケン大での実験データを活用して、モデルの高度化が期待できる。
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