本研究の目的は,翼の動作や気流の流れの感知,脚構造に関する知見を取り入れた鳥型飛行ロボットを再現し,工学的な観点からこれらのメカニズムや機能を解明することである.令和4年度は3つの研究に取り組んだ. 1つ目はツイストドライブ機構を用いて筋骨格構造を模倣した羽ばたき機によるフラッピング運動とフェザリング運動の駆動システムの統合による同期動作の実現である.フラッピング運動とフェザイング運動のそれぞれの駆動システム内のコンピュータ間で通信を行うことによってタイミングを合わせ,同期動作を実現した. 2つ目は飛行ロボットの周囲の流れ場の推定である.前年度に開発したエアフローセンサアレイを用いて,飛行状態を模擬した2方向からの風に対しても強い風の方向を推定することができた.エアフローセンサアレイを飛行ロボットに取り付けて地面を走行させ,送風機によって周囲から風をあて,強い風の吹いている方向を感知し,自動的に舵を切って風上に向かっていくシステムを開発した. 3つ目は脚構造を模倣した脚ロボットの開発である.脚機構の設計を見直し,羽ばたき飛行ロボットに脚を取り付けるのではなく,脚構造を組み込んだ羽ばたき飛行ロボットを一から設計した.脚機構では膝と踵を介して腱を引っ張ることで趾を曲げ枝を把持していたものを,踵だけで把持を行えるように改善した.これらにより全体の軽量化を実現した.これらの改善により,枝への着陸および枝からの飛び立ちの実現に近づくことができた. 3年間の研究期間において,ツイストドライブ機構を用いて筋骨格構造を模倣した羽ばたき機によるフラッピング運動およびフェザリング運動の同期動作に成功した.小型フローセンサを組み合わせ,機体の周囲の風向・風速を推定するシステムを構築し,風上に向かうシステムを構築した.鳥類の脚構造の知見を取り入れた把持ハンドを実現し,枝を掴んだ状態の姿勢制御に成功した.
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