本研究の目的は,視覚障害者が伴走者の誘導を受けないで陸上競技場のレーン上を疾走できる誘導支援システムを開発することである。視覚障害者の陸上競技には目の代わりとなる伴走者が必要であり,伴走者には走者以上の運動能力と視覚障害者とをつなぐガイドロープによって進行方向を伝える技術が要求される。開発する誘導支援システムはレーンや方向を意識することなく走ることのみに集中してできる進路呈示であり,進行方向の呈示が外乱となってランナーの競技に集中した意識を乱さないシステムの構築である。 本研究は,大きく3項目「①力覚呈示装置の試作と検討(IARGの改良と開発)②位置・方向の計測および誘導方向の決定③集中度センサによる違和感の評価」に分類してしている。令和4年度は①および②の項目に対して注力した。項目①は視覚障害者に進行方向を伝える装置の開発であり,現有のIARGを利用した誘導である。②は視覚障害ランナーの現在位置・進行方向の計測であり,RTK技術による高精度測位サービスを利用した。 令和4年度に実施した研究では,伴走者をマスター,ランナーをスレーブとするマスター・スレーブ制御システムに見立て,ランナーの向きが伴走者のそれと一致する制御系を目指した。伴走者の進行方向および伴走者のそれを高精度に測位することは出来たが,これまで使用してきたシステムではマスターおよびスレーブのデータを同時かつ相互に処理することは難しかった。十分な処理能力をもつシステムに改良するために,処理能力の高いマイコンに変更するとともにロボット開発用のプラットフォームを導入して,システムの見直しを行った。
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