研究課題/領域番号 |
20K04366
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
園部 元康 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (50455169)
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研究分担者 |
池内 昌彦 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00372730)
永野 靖典 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (30380372)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バランス / 検査 / 感覚器 / フォースプレート |
研究実績の概要 |
本研究は,立位における一定周波数による床面の前後への揺動によって,体性感覚検査および足関節戦略の強化を図ることを目的としている.今年度は,装置開発の完了,特に低周波帯域における一定周波数揺動での特性調査,検査のターゲットとすべき患者の決定を行った. 装置開発については,足裏のフォースセンサと腰・頭部への慣性センサの搭載を可能とする揺動システムの組み込みプログラムを完成し,実際に計測動作が行えるようにした.さらに,得られた計測データから解析結果を即時に表すPCアプリケーションをMatlab App Designerで製作し,医療現場でも即時に状況が判断できるように改良した. 低周波帯域での特性については,体性感覚が支配的となる0.2~0.3Hz程度で周波数帯域での揺動に対する応答特性を調査し,この帯域では圧力中心と質量中心の大きさがほぼ等しくなることから,体性感覚検査や足関節のトレーニングとして効果が見込まれることを確認した.一方,この周波数帯域では副次的に乗り物酔いの症状が発生する可能性があるため,0.4Hz程度のより高い周波数で低周波モードを強制的に維持させるためのフィードバックシステムの開発が必要であることを認識した. 本手法を体性感覚検査や足関節トレーニングとして適用する対象を糖尿病患者に決定した.糖尿病患者は末梢神経障害があり体性感覚に問題が生じやすいこと,また,その特性が薬の投与によって変化しやすいので,微妙な変化を捉える必要があること,さらに,転倒の危険が比較的小さいことから選定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検査方法の開発では,当初は想定していなかった乗り物酔いの問題に気づき,その改善策が必要となった.体性感覚が支配的な運動を得るためには,0.3Hz以下の周波数で揺動する必要があるが,乗り物酔いが生じやすいのも0.3Hz以下の帯域である.そのため,より高い0.4Hz程度で体性感覚が支配的な運動モードを励起する必要が生じ,そのための揺動方法を開発している. 一方,患者の計測については,2021年12月以降の新型コロナウイルス患者の増加に伴い,病院への立ち入りが制限されているため,当初の予定よりも遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の2点である. 1点目は,体性感覚検査に適した運動モードを励起するためには0.2Hz程度の低周波の揺動がベストであるが,この周波数では乗り物酔いが生じる.そこで,乗り物酔いが生じにくくなる0.4Hz程度で同運動モードを励起するために,被験者の状態をフィードバックして揺動を調整する手法を開発する. 2点目は,糖尿病患者のデータを計測し,健常者と比較することで体性感覚検査を行う.具体的には,揺動に対して身体が直立する運動モードを励起し,そのときの定常振動からの偏差および局所安定性(Local Dynamic Stability)によってバランスの安定性を評価する.さらに,同モードのでの介入を繰り返したときの運動の変化を記録し,その体性感覚の改善を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,コロナ禍による学会の遠隔化によって旅費が生じなかったことと,患者を中心にデータがとれず,被験者謝金が生じかかったため.今年度の仕様計画としては患者データを取得するための人件費および投稿予定の論文掲載費に充てる.
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