研究課題/領域番号 |
20K04367
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
山本 崇史 工学院大学, 工学部, 教授 (30613640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 均質化法 / 音響メタマテリアル / 構造・音響連成 / トポロジー最適化 / 密度度法 / 吸音 / 遮音 |
研究実績の概要 |
弾性・音響メタマテリアルとは人工的な周期構造物で,その単位構造に共振・共鳴系を有するのが特徴である.本研究ではその単位構造の設計手法構築が目的である. 従来の均質化法で行う漸近展開において,変位や音圧などの物理量に加えて,周波数も漸近展開し,音響・構造連成系において動的均質化を行い,理論展開を行った.ε-2のスケールであるミクロ構造においては非連成となり,音響系および構造系それぞれの固有値問題が得られ,また.ε-1およびε0のスケールでは連成系の境界値問題となることが分かった.また,メタマテリアルとしての機能を有するかどうかを評価するときに必要となる等価特性を導出した. コーディングに関して,近年,有限要素解析における要素積分や全体マトリックスの組み立てなどの機能を備えたプログラミング環境(COMSOLやFreeFEM++など)を用い,構築時間の短縮を計ることが多くの先行研究でなされている.本研究においても,C++で構築した従来の均質化法コードをCOMSOLの弱形式機能を用いたコードに移植し,従来のコードで計算した結果と同じ結果になることを確認した.これにより,今後のコーディングの効率化を計る. 従来の均質化法を用いた単位構造のトポロジー最適化については,散逸エネルギー最大化すなわち吸音率最大化の問題の場合,流体相については,ペナルティを密度にのみ与えたほうがよいことが分かった. また,トポロジー最適化とは異なる設計手法であるが,有効媒質近似に基づき理論モデルを構築し,単位構造内部に含まれる共振系・共鳴系を構成する材料物性値や幾何学的寸法などのパラメータを遺伝的アルゴリズムにより最適化した.ヘルムホルツレゾネーターとメンブレンで構成される音響メタマテリアルに適用し,レゾネーターおよびメンブレンの寸法を最適化し,所望の周波数帯における音響透過損失を改善する構造を創出することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨今の社会情勢下において,学生の研究活動に対する制約などのため研究の進捗に少なからず影響があり,現在までの進捗としては計画よりもやや遅れている状況である. 理論展開と並行し,今後のコーディングの効率化を計るため,内製の均質化法コードのプログラム言語をC++からCOMSOLへと変更した.これにより,実際の問題に応用するときに必要なプリ・ポストプロセッシングも容易に行うことができる.
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今後の研究の推進方策 |
構築した動的均質化に,密度法にもとづくトポロジー最適化を組み込み,弾性・音響メタマテリアルの単位構造の設計法として構築する.目的関数には,吸音率や音響透過損失あるいはそれと同等な巨視的な物理量をとることを考えている.この場合,単位構造と巨視的な全体構造のスケールをまたいだ設計感度が必要になるが,従来の均質化法にもとづくトポロジー最適化と同様に,随伴変数法を複数回用いて求めることを考えている.また,先行研究で行われているように,等価特性を目的関数にとり,その負値を最小(絶対値としては最大)にする設計最適化も考えている.この場合,スケールをまたいだ設計感度は不要であり,最適化アルゴリズムとしては簡略できることになる. あわせて,前年度に実施した有効媒質近似に基づき理論モデルによるパラメトリック最適化も継続して検討する.最適化計算の収束性や得られた構造の製造可能性などが課題になることが散見されるトポロジー最適化と異なり,実際に試作可能な結果を得やすいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の次年度使用額が発生したが,おおむね予定通りの支出である.
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