最終年度は,非拘束マニピュレーションで扱われるシステムとして,ボールの打ち上げに関する外乱下でのロバスト安定化,および劣駆動系のPendubotの非線形最適化制御を実施した.また,人間が実際に行う非拘束マニピュレーションの運動をロボット制御で再現することを目指し,NARXモデリングによる筋電位信号による腕関節の推定を実施した.その他に,衝突現象による不連続性を表すバックラッシュに関して,実機検証が可能な実験機における外乱推定問題に取り組んだ. 研究期間全体を通じて,非拘束マニピュレーションの具体的なシステムとして,コンタクトジャグリングおよびボールの打ち上げを実現する制御方策を開発した.いずれにおいても制御器は,タスク全体の動きを保証するアウターループとタスクの安定性とロバスト性を補償するインナーループから構成されるカスケード制御系であり,この構造が複雑な巧みさを構築する根幹を成していると思われる.さらに,さらなる複雑な非拘束系への応用のため,劣駆動系として倒立振子とPendubotに関する非線形最適制御手法を提案することで,システムが持つ大域的な動的巧みさの一端を明らかにした.非線形最適制御では安定多様体に基づき多様な最適軌道を導出することが可能であり,運動の巧みさの多様性を引き出すことが可能である.これらの成果を補強する課題として,不連続現象が常時発生するバックラッシュ系を扱い,非整数階微分による制御器や外乱推定器を開発することに成功している.
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