研究課題/領域番号 |
20K04375
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
川瀬 利弘 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40633904)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リザバーコンピューティング / 空気圧 / 人工筋 / ソフトロボット / 形態による計算 |
研究実績の概要 |
本研究では、ソフトロボットが自らの身体を計算に活用する新たな原理として、空気圧管路系による物理リザバーコンピューティング(空気圧リザバーコンピューティング)を提案し,実際にこれを用いて制御を行うソフトロボットを開発する。 本年度は空気圧リザバーコンピューティングの解析とともに空気圧ゴム人工筋アシストスーツの制御系への適用を行った。まず前年度に行った管路1本によるリザバーコンピューティングのシミュレーションを用い、管路が持つ記憶容量を定量的に評価した。その結果、管路の径や長さにより記憶容量が変化し、それが計算の精度に寄与していることが示唆された。これらの結果および前年度の解析結果とアシストスーツによる関節角度推定実験をあわせ、論文として発表した。続いて、空気圧リザバーコンピューティングの特性を解析するために、Brownの管路モデルをベースとした、リザバーとなる管路ネットワークの解析的モデルを構築し、リザバーの周波数特性と推定精度の関係を議論した。このモデルは計算する対象に適合したリザバー用の管路ネットワークの設計に役立つと考えられる。そして空気圧ゴム人工筋アシストスーツへの適用に関しては、管路内の圧力から歩行/走行の歩容モードの違いを推定することに成功した他、空気圧リザバーコンピューティングによる関節角速度推定を用いて、実際に人工筋による歩行アシストのリアルタイム制御を行なうことに成功した。この成果はロボットのトップ国際会議であるICRAに採択され、翌年度に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アシストスーツの制御を空気圧リザバーコンピューティングを用いて行なうことに成功し、これまで推定のみで検証してきた空気圧リザバーコンピューティングがロボット制御に使用可能であることを実証できた。またリザバーの解析的モデルにより、空気圧リザバーコンピューティングに用いる管路ネットワークの特性を、設計パラメータから定量的に把握することが可能となり、これまで試行錯誤的に行ってきたリザバーを仕様に基づき設計するための重要な道具が手に入った。これにより、アシストスーツ以外の対象における空気圧リザバーコンピューティングの適用に大きく近づいた。
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今後の研究の推進方策 |
空気圧リザバーコンピューティングの理論的な解析をさらに進め、推定対象に適合したリザバーの事前設計を可能とする。それをもとに、空気圧リザバーコンピューティングをアシストスーツ以外を含めたソフトロボットに対して適用し、ソフトロボットを用いた実験やシミュレーションにより計算性能の検証を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の他機関への異動が決定したことにより、一部の実験機材を追加購入する必要が生じたため。翌年度分と合わせ、空気圧機器制御の基本的な装置や国際会議・論文での発表のために用いる。
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