研究課題/領域番号 |
20K04380
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
亀川 哲志 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 准教授 (80432623)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヘビ型ロボット / 形状ベースコンプライアンス制御 / 圧力センサ |
研究実績の概要 |
ヘビ型ロボットは細長い構造であるので狭隘地や複雑な構造物に進入して探索をするロボットとしての応用が期待されている.これまでにも多種多様なヘビ型ロボットが研究開発されているが複雑な環境で適応的に移動できるヘビ型ロボットは実現されておらず,これが実用化にむけた大きな障害であると考えられる.本研究にこの障害をクリアできれば,災害発生時には倒壊した建築物内部を移動して要救助者の探索をしたり建築物の損害状況を調査したりするヘビ型ロボットの実現,ならびに,平常時には工場などで配管内の点検を行うロボット技術に応用されることが期待できる. 本研究の目的は,ヘビ型ロボットを移動させるためのモーションを事前計画することなく,ロボットと環境との力学的相互作用の中で適切に移動するためのモーションを創発的に生成することである.一般の移動ロボットの運動生成においては,障害物を避ける運動が計画されることが多いが,本研究においては障害物との接触により生ずる反力を積極的に利用して推進するヘビ型ロボットの実現を目指している.これは,ヘビ型ロボットの適用が期待されるのは狭隘な環境であり,環境との接触による相互作用は不可避であるからである.環境との接触を積極的に利用して推進するヘビ型ロボットが実現されれば,本来期待されている用途でのヘビ型ロボットの実用化が加速すると考えている.そのため,本研究では3次元運動が可能なヘビ型ロボットのすべてのリンクに全周の圧力を測定するためのセンサを搭載し,このセンサ情報を利用した局所的アドミッタンス制御により適応的に複雑な環境を走破するヘビ型ロボットの実現を目指している.これまでに,アドミッタンス制御を応用した形状ベースのコンプライアンス制御をヘビ型ロボットのシミュレータと実機に実装し,狭隘な環境や配管環境での推進実験を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度において計画どおり下記の内容を実施した.まずアドミッタンス制御を応用した形状ベースコンプライアンス制御(Shape-Based Compliance control, SBCと略される)について検証した.SBCでは,ヘビ型ロボットは基準となる形状に対し,ヘビ型ロボットに加わる外力によって形状パラメータを変化させることでヘビ型ロボットのなす目標形状を更新する.ここで,活性化ウィンドウを用いた形状関数による区間的な制御を加えることで,SBCによる形状変化の影響をヘビ型ロボット先頭から最後部までの特定の区間に対してのみ及ぼすことができるようになる.次にSBCのアルゴリズムをシミュレータ上に構築したヘビ型ロボットに実装してその挙動を確認した.なお,ヘビ型ロボットが動作する環境としては,狭隘な経路,複数の杭のある平面内,さらに,配管環境を用意した.これにより,ヘビ型ロボットに外力が加わる場合に,適切にヘビ型ロボットの形状を変化させることができることを確認した.さらに,我々の保有するヘビ型ロボットにもSBCのアルゴリズムを実装して,基本的な動作検証も行った.実機のヘビ型ロボットの全周には,ヘビ型ロボットに加わる圧力を測定するためのCenter of Pressureセンサが実装されていたが,昨年度にその大部分が破損していた.そこで本研究にて破損していたセンサを新しく修繕して実機実験を行った.実機実験においても,ヘビ型ロボットの体幹外周に圧力を加えることで,特定の区間の形状のみを変化させることができることを確認した.特に配管内をヘビ型ロボットが推進する実験を実施し,配管を垂直の設置した状態で,途中で配管径が小さくなる場合においても,SBCによりヘビ型ロボットの形状が適切に変更されることで,配管内壁へのつっぱりを保ちながら配管内を垂直できることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,まずは配管の内部に突っ張って移動する際のSBCのアルゴリズムの一部を見直す予定である.ヘビ型ロボットが推進する際には,推進量に合わせて活性化ウィンドウを適用する区間をずらしていくアルゴリズムになっているが,螺旋捻転運動の場合には,ヘビ型ロボットは接線方向には移動しないため,これを踏まえた改良を行う予定である.また,狭隘な通路や杭の出た平面内をペダルウェーブ推進で移動するヘビ型ロボットが環境と接触しながら移動する場合については,2020年度に基本的な動作検証を行ってロボットの挙動を確認したが,本研究では複雑ながれき環境でのヘビ型ロボットの移動を目指しており,実験環境についてはさらに複雑なものを用意して,今後検証を継続する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
独立基盤形成支援(試行)の支援を受けたことにより,初年度に当初の計画より多くの予算が配分された.継続して,独立基盤形成支援(試行)による予算についても研究期間内に適切に使用する予定である.
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