研究課題/領域番号 |
20K04383
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
大隅 久 中央大学, 理工学部, 教授 (00203779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パラレルワイヤ懸垂機構 / 位置決め / 振動制御 |
研究実績の概要 |
4本のワイヤで懸垂されたベースに,8枚のプロペラとカウンタウェイトを搭載し,4本のワイヤ長で懸垂部の釣り合い位置を目標位置に移動させながら,プロペラで振動抑制を行い,カウンタウェイトで水平を保つためのシステム開発を行う課題である。令和2年度は,既存の4本のワイヤ懸垂システムの実験システムに,8枚のプロペラとIMUを搭載したペースを作製した。まずは見積もりのため,ワイヤの撓みは考慮せずに懸垂系の振動モデルを構築し,レギュレータにより振動制御を行うシミュレータを作成した。更に,ベースの釣り合い高さが与えられた時,振動をより短時間で抑制することのできるプロペラのベース設置角度を求めた。その結果を利用して,プロペラ,モータ,及びベースに搭載する電源を選定した。制御には,制御サンプリングを確保するため,地上のデスクトップPCとモータコントローラ,IMUを有線で接続して振動抑制実験を行った。実験結果からは,水平x,y方向に対する振動はシミュレーション結果とほぼ同じとなり,非常に高い効果で振動抑制を実現することができた。一方,旋回方向であるz軸回りのねじり振動に関しては,その効果に若干の低下が見られた。これは有線ケーブルの剛性が振動に影響を与えていることが原因であることが判明しており,次年度以降コントローラ全体をベースに搭載しなおすことで解決することができると考えている。また,装置と実験環境の整備に時間が掛かると判断し,まずはワイヤの撓みを考慮しないモデルでの実施を優先したため,ワイヤの弛みの考慮については次年度以降に扱う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はワイヤの弛みを考慮した振動モデルの構築と,つり合い点での剛性解析を行い,実験装置の製作に取り掛かるまでを予定していたが,新型コロナの影響に配慮して物品の手配を優先的に行うこととし,簡易モデルでの振動抑制シミュレーションをベースに発注を行った。その結果,装置の手配が順調に進んだこともあり,当初予定よりも実験を先行して実施することができた。一方,ワイヤの弛みを考慮したモデルに関してはこれからとなっており,総合的にはほぼ予定通りの進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度からは,カウンタウェイトの移動機構を製作し,新たにベースに搭載して,まずは静的な動作でベースの水平移動を実現する。このため,目標の釣り合い位置,姿勢が与えられた際のワイヤ長,カウンタウェイトの位置を計算する逆運動学計算アルゴリズムを完成させる。令和2年度に簡単な解析を行ったところ,達成できる姿勢とできない姿勢があることが分かっており,逆運動学解の存在領域を明確化する必要がある。よって,令和3年度はこの点を理論的に明らかにする。次に,カウンタウェイトの駆動機構を決定し,設計,製作を行う。懸垂ベースの重心位置をカウンタウェイトで大きく変化させるには,ベース質量に対してカウンタウェイト質量が相対的に大きい必要があり,ウェイトを移動させる駆動モータがベース側に設置されていると,重心位置は非常に狭い範囲でしか変位させることができず,ベースが水平に移動できる可動範囲も非常に狭くなる。このため,モータ質量自体がカウンタウェイトの役目となるよう,モータがベース上を移動できる機構を検討する。 また,令和2年度に完成したプロペラによる振動抑制はカウンタウェイト搭載前における実験であったため,カウンタウェイトが搭載されることによる振動抑制効果は大きく変化することが予想される。このため,完成した装置に対する振動抑制シミュレーションを行い,適切なプロペラ取り付け角度や取り付け場所を見直し,振動抑制の効果を実験により確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は令和2年度に装置構成のための部品をほぼ発注する予定で計画をしていたが,プロペラ駆動部とカウンタウェイト駆動部それぞれの設計に時間がかかったこと,プロペラによる振動抑制実験を優先したことから,カウンタウェイト駆動装置の発注が遅れたため,消耗品費に残額が発生した。その他,参加を予定していた国内,海外の学会への旅費が,新型コロナの影響で不要となった。これら次年度使用額により,カウンタウェイト駆動部の構成部品一式を購入する他,試作装置の改良のための費用に充てる。
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