研究課題
本研究は,「竜脚類などの大型の四足生物がどのように旋回するのか?」という疑問に対し,自動車工学の幾何学的旋回理論に基づいた考察をおこない,ロボットによってその妥当性を評価することを目的とする.研究成果として,これまでに発見された大型竜脚類と採取したゾウの旋回行跡に対し解析を行った結果,竜脚類は前肢操舵によって内軌道差,ゾウは後肢操舵によって外軌道差となるように旋回することを示した.また,前後操舵比は荷重比の逆比となる傾向を持ち,これは旋回時にそれぞれの生物が慣性モーメントを最小にするように操舵していることが原因であることを理論的に明らかにするとともに,シミュレーションにより妥当性を検証した.竜脚類の旋回行跡は,モロッコ,北米,ヨーロッパ,中国などで報告されているデータに基づいて解析を行い,大型の竜脚類が比較的小さい半径で旋回するとき顕著に軌道差が見られるとともに,前後操舵比が竜脚類の推定荷重比の逆比となる傾向を確認した.さらに,軌道差は直進中においても姿勢を進行方向に対して傾いた状態をとると生じることをゾウの実験により明らかにした.この傾向はモロッコや中国の竜脚類旋回行跡においても類似したものが確認された.得られた結果から,軌道差は大型四足生物が比較的小さい半径で定常旋回するとき生じる傾向にあり,背景にはより楽に運動する(慣性モーメントを最小化する)というメカニズムがあるものと考えられる.さらに,旋回運動をロボットにより実現するために,受動歩行メカニズムに基づく四足歩行機を実現し,これに位相振動子を導入することで膝の振動数に応じて歩容が自律的に変化することを確認した.ただし,旋回運動を実現するには至っていない.また,より生物に近い歩容を実現するために脊椎動物の筋骨格系における受動的連動メカニズムに注目し,立ち上がりおよび自重支持が可能であることを簡単な実験により確認した.
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Artificial Life and Robotics
巻: online ページ: 1-7
10.1007/s10015-023-00862-2