本研究では、体外からの超音波照射により血管内を作動する医療用アクティブ・ステントを開発するための基礎研究を行う。ステントは血管の狭窄部に留置され、狭まった血管を拡大する医療器具である。時間が経過するとステント周辺にプラークが蓄積する再狭窄の問題が生じる。アクティブ・ステントはプラークの蓄積予防に役立つ。 アクティブ・ステントには超音波モータの駆動原理が応用されている。主な構成要素は超音波を受信するレシーバ部とステータとして機能するステント部であり、ロータの役割を血管内壁が担う。特に作動性能に影響を及ぼすレシーバ部の形状は、受信方法の違いから二種類が考えられる。一つは共振を利用する形状であり、もう一つは強い超音波振動を受信できる形状である。 先行研究において、超音波モータの駆動原理を発展させアクティブ・ステントのための理論を構築してきた。また、共振を利用するアクティブ・ステントについて、レシーバ部の設計や試作したアクティブ・ステントの作動実験を実施してきた。結果として、共振の利用を考えたアクティブ・ステントに関する共振現象は確認できたが作動には至っていない。そのため、アクティブ・ステント作製のために必要な技術要素の多くはまだ明らかになっていないと言える。 本研究課題では、先行研究を踏まえて共振利用とは別形状のレシーバ部を設計する。さらに、超音波の受信方法が異なる二種類の形状のハイブリッドについても研究を進める。レシーバ部の形状を工夫し、アクティブ・ステントの最適設計および擬似血管内における作動を目指す。これまでに、ハイブリッド形状に関する調査を数値解析により実施し、解析結果を踏まえてレシーバ部の実験モデルの作製準備に取り掛かった。また、今後実施する実験の再現性を向上させるため、実験装置を再構築した。
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